研究課題
まず,タンパク質低栄養が誘導するFGF21が肝臓からのトリアシルグリセロール(TAG)の放出を促進することで肝臓への脂肪蓄積を抑制するかを検討した。20%のカゼインを含む対照食(20P)あるいは5%のカゼインを含む低タンパク質食(5P)を給餌した野生型(WT)およびFgf21-ノックアウト(KO)マウスに,リポプロテインリパーゼ阻害剤のTriton WR-1339を尾静脈投与し,経時的に血漿TAG濃度を測定した。その結果,Triton WR-1339の投与により血漿TAG濃度は経時的に増加したが,いずれの時間においてもFgf21および5P摂取の影響は認められなかった。したがって,FGF21による肝臓脂肪蓄積の抑制は肝臓からのTAG放出の促進を介さないことが示唆された。次に,スタチンを投与してコレステロール合成を抑制したFgf21-KOマウスに5Pを給餌し,FGF21がコレステロール合成を抑制することで肝臓へのコレステロールの蓄積を抑制するか検討する実験を計画した。しかし,マウスへのスタチン投与の効果が確認できず,本実験を行うことができなかった。続いて,前年度にタンパク質低栄養時には褐色脂肪組織(BAT)および鼠蹊部白色脂肪組織(ingWAT)でFGF21依存的に脱共役タンパク質(UCP)1が発現誘導されることが明らかとなったことから,FGF21が体熱産生の亢進を介して肝臓脂肪蓄積を抑制するか検討した。室温(22℃)およびUCP-1の発現が抑制される30℃でWTおよびFgf21-KOマウスに20Pあるいは5Pを給餌し,肝臓の脂質含量を測定した。その結果,30℃ではFGF21の有無に関わらず22℃で生じる5P摂取による肝臓TAG蓄積の増加が減弱する傾向を示した。したがって,FGF21を介して発現誘導されるUCP1は肝臓脂肪蓄積の抑制には関与しない可能性が考えられた。
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