研究課題
昨年度引き続きCCDC152によるSelenoprotein P (SeP)翻訳抑制メカニズムの探索を行った。特に、CCDC152によるSeP翻訳抑制に必要な配列の探索を中心に行った。SeP mRNAとCCDC152の一致配列をSeP mRNAのセレノシステイン挿入配列(SECIS配列)、3'UTR配列など、複数の部位に分け、それらに対するCCDC152配列をHepG2細胞に発現させSePタンパク質量・mRNAの変化を解析した。その結果、SePのmRNA、タンパク質量ともに有意な変化が認められず、SeP mRNAとCCDC152の一致配列内の配列だけでは翻訳抑制を行えないことが分かった。そこで、3'側、5'側の配列の必要性を検討した。その結果、3'側、5'側の配列だけでは翻訳抑制効果は弱く、CCDC152-SeP mRNAの一致配列と3'側、5'側の配列の配列が必要なことが分かった。次に、CCDC152の発現を制御する化合物の探索を行った。抗糖尿病作用が報告されている食品由来成分のスクリーニングを行い、緑茶に多く含まれるカテキン類がCCDC152の発現亢進が見られ、SePのタンパク質を減少させることが分かった。特にエピガロカテキンガレート(EGCG)はSeP mRNAの発現量に変化を与えることなくCCDC152の発現量を上昇させ、SePタンパク質を減少させた。そのためEGCGによるSePタンパク質の減少はCCDC152の発現増加を介していると考えられる。EGCGを投与したマウスでは肝臓でのCCDC152の発現上昇が起こり、血漿中のSePの減少が確認された。この時の肝臓ではSeP mRNAの発現量に変化は見られず、CCDC152はin vivoにおいてもSePの翻訳を抑制することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
CCDC152によるSeP翻訳抑制メカニズムは解析ができており、必要配列の絞り込みも順調に進んでいる。CCDC152を介した糖尿病治療を行う際に必要になるSeP mRNAに影響を与えずCCDC152の発現を増加させる化合物としてカテキンファミリーを同定した。特にEGCGはin vivo, In vitroどちらでもCCDC152の発現にのみ影響を与える化合物であり、有望な候補物質の必つであると考えられる。
本年度は引き続きCCDC152によるSeP翻訳抑制に必要な領域の絞り込みを行う。その後、CCDC152-SeP mRNAの解析によって得られた情報をもとにグルタチオンペルオキシダーゼをはじめとしたSESIS配列を有するSe含有タンパク質全般でも同様の翻訳抑制メカニズムが働くかの検討を行う。CCDC152を利用した糖尿病治療の観点から、糖尿病モデルマウスにEGCGによってCCDC152を発現亢進させ、SePによる糖尿病態の変化を検証する。
CCDC152の発現量を調整する化合物のスクリーニングが順調に進み、候補化合物の購入費用及びSePmRNA・タンパク質の発現解析に用いる金額が当初予定より低くなった。繰り越した金額は本年度行う予定の糖尿病モデル動物を用いた実験やCCDC152の必要配列の絞り込みのための実験に用いる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 8(1) ページ: 1658
10.1038/s41467-017-01863-z.
https://www.doshisha.ac.jp/attach/news/OFFICIAL-NEWS-JA-5377/92271/file/besshi.pdf