研究課題/領域番号 |
16K18708
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
黒川 優 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (70759761)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | セレン / セレノシステイン / セレンタンパク質P / グルコース |
研究実績の概要 |
セレンタンパク質Pは肝臓で合成され脳や精巣にセレンを輸送する糖タンパク質である。受容体を介して末端組織にセレンを輸送するセレンタンパク質Pが、抹消組織においてどのような代謝変化を引き起こすかを解析するため本年度は、以下の実験系を構築することに成功した。 1. セレンタンパク質Pモノクローナル抗体を使用したカラムを作製した。抗体カラムを使用してマウスのセレンタンパク質Pを大量に精製することができた。遺伝子組み換えによりセレノシステイン残基をシステイン残基に置換したタグ付きのセレンタンパク質P-Cysを調整した。タグ抗体でセレンタンパク質P-Cysを精製した。本タンパク質をマウスに尾静脈注射し、グルコース負荷試験を行ったところ、血中グルコースがコントロールに比べて優位に変化したことを確認した。 2. アデノウイルスによってセレンタンパク質Pの受容体であるApoER2をマウスの肝臓に高発現させる実験は、セレンタンパク質の発現変化に十分な影響が確認できていない。今後はMOIを増加して実験を行う。 3. 前年度に続き血管内皮細胞におけるセレンタンパク質Pのシグナル伝達についての解析を行っている。マウス血管内皮細胞においてセレンタンパク質Pの受容体であるApoER2の発現をmRNAとウエスタンブロットで解析した。またApoER2を過剰発現させた血管内皮細胞におけるセレンタンパク質の発現をリアルタイムPCRで解析している。セレンタンパク質Pもしくは亜セレン酸をセレン源とした場合のセレンタンパク質の発現を調べたところ、低濃度のセレンでmRNAが増加するものと減少するものがあることがわかった。セレンタンパク質Pを固定化したカラムに結合する因子をRNA干渉で減少させたところ、セレンタンパク質Pをセレン源とした場合にセレンタンパク質のmRNAが優位に減少した。この因子とシグナル伝達について解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アデノウイルスによるセレンタンパク質P受容体のマウス肝臓での強制発現は優位な違いが見られないので、MOIを増やす予定である。アデノウイルス濃度を増加させることで肝障害が観察される場合は、他の研究を優先する。
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今後の研究の推進方策 |
マウスにセレンを持たないセレンタンパク質Pを尾静脈注射したところグルコースの代謝が変化したが、これを詳細に解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の執筆時間を優先したため。マウス購入費と実験消耗品に充てる計画である。
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