セレンタンパク質Pは肝臓で合成され脳や精巣にセレンを輸送する糖タンパク質である。受容体を介して末端組織にセレンを輸送するセレンタンパク質Pが、抹消組織においてどのような代謝変化を引き起こすかを解析するため本年度は、以下の実験系を構築することに成功した。 1. セレノシステインをシステインに置換しタグを融合した改変型セレンタンパク質Pをマウスに尾静脈注射し、グルコース負荷試験を行ったところ、血中グルコースがコントロールに比べて優位に変化したことを確認した。引き続き追加実験を行った。 2.前年度に続き血管内皮細胞におけるセレンタンパク質Pのシグナル伝達についての解析を行った。受容体の発現量をRNA干渉により低下させると特定のセレンタンパク質の発現量が低下した。一方でセレンタンパク質Pは受容体にユニークな結合をすることが分かっているため、セレンを代謝する以外の機能を解析するために、シグナル伝達に関わる因子の発現量をリアルタイムPCRを用いて定量した。リアルタイムPCRにはプライマーアレイを使用した。セレンタンパク質P、システイン型セレンタンパク質Pもしくは亜セレン酸をセレン源とした場合にセレンではなくセレンタンパク質Pの立体構造が引き金となっているmRNAの変動が優位である因子を特定した。この因子とシグナル伝達について解析を行った。セレンタンパク質Pが関わるシグナル伝達に関連して、脳における解析も行い、シナプスにおける神経伝達についての機能を見出すことに成功した。 3.マウス血管内皮細胞において改変型セレノプロテインPを暴露した場合の微量の一酸化窒素、過酸化酸素の産生を解析するためにセルアナライザーを利用した。
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