研究実績の概要 |
フラクトオリゴ糖(FOS)は、善玉菌の数を増加させヒトの腸内環境を改善することで健康維持に寄与するプレバイオティクスである。しかしながら、腸内では多種類の腸内細菌に加えこれらが産生する代謝産物、また宿主からの反応などによる複雑な複合微生物系を構成しており、その詳細なメカニズムについては不明な点が多い。 これまでに報告されているFOSの効果は、長期間摂取による善玉菌の増加、宿主腸管においてはIgAの腸管への輸送に関与するpIgRの発現上昇、またIgA産生細胞である形質細胞の増加によるIgA量増加などが報告されているが一方で我々はマウスを用いてFOSを摂食させることで1~2日後には糞便中のIgA量が増加することを明らかにしている。我々はこの現象に伴う短期間での腸内細菌叢の変動および代謝産物の変化がどのように生じているかを明らかにすることを目的としている。 本年度は、BALB/cAマウスを日本クレアから購入し、AIN93G餌(オリエンタル酵母)で2週間馴化を行った後、AIN93G餌の成分中のセルロース分をFOSに変更した5% FOS餌を摂取させ、0, 4, 8, 12, 16, 20, 24, 36, 48時間後に糞便を回収し、糞便中の細菌叢の構成および代謝物、糞便中IgA量の増減の測定を行った。この結果、4~8時間でLactobacillaceaeの増加が生じ、12時間以降にBacteroidaceae等が増加した。代謝物はLactobacillusの増加と関連して乳酸の増加が見られ、一方で12時間で他の短鎖脂肪酸は減少した。その後およそ16~20時間程度で糞便中のIgA量が増加することが明らかになった。その際の宿主腸管でのpIgR発現をqPCRで測定したが、短期間でのpIgR発現上昇は見られなかった。
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