研究課題/領域番号 |
16K18712
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中西 裕美子 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 研究員 (10614274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 加齢 / 肥満 |
研究実績の概要 |
平成28年度はまず、無菌C57BL/6N雄マウスにYoungマウス由来糞便懸濁液とMiddle-agedマウス由来糞便懸濁液を経口投与しYoungフローラマウスとMiddle-agedフローラマウスの2つノトバイオートマウスを作製した。その後9週齢で3群に分け、通常食、西洋食、及び、高脂肪食に餌を変え、体重経過と各種肥満評価を行った。その結果、餌を変えてから1か月後、西洋食群と高脂肪食群において、Middle-agedフローラマウスはYoungフローラマウスと比較し優位に体重が増加していた。また、1か月後の時点でグルコース負荷試験と血中インスリン量の測定を行ったところ、Youngフローラマウスと比較しMiddle-agedフローラマウスでは耐糖能の悪化と血中インスリン量の低下がみられた。さらに、Middle-agedフローラマウスでは脂肪も蓄積していたことから、Middle-agedフローラが耐糖能異常や肥満を引き起こす可能性があることが示唆された。腸内細菌叢解析を行った結果、高脂肪食を与えたMiddle-agedフローラマウスではAllobaculum属の細菌が増加しており、これはマウスでも加齢に伴い増加していた細菌であったことから、Allobaculum属の細菌が加齢に伴う肥満の要因になっている可能性が考えられた。また、菌叢解析と同時にGCMSによる糞便中の短鎖脂肪酸の測定も行ったが、Middle-agedフローラマウスでは糞便中短鎖脂肪酸が低下する傾向がみられたが、統計的に優位な差はみられなかった。また、試験を短期間で行うため、老化促進モデルマウスの検討も行う予定であったが、40週齢前後のSPFマウスは購入可能であったため、まずは購入した加齢のマウスを使用して、通常のYoung(8-10週齢)SPFマウスと比較し、血糖値や体重当たりの脂肪量には有意な差があり、加齢マウスはYoungマウスと比較し肥満や耐糖能異常である状態は確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず1つ目の目的であった、加齢腸内細菌叢の肥満を評価することはでき、加齢腸内細菌叢(Middle-agedフローラ)は肥満や耐糖能異常を引き起こす可能性があることがわかった。さらに加齢に伴う肥満を誘導する細菌はAllobaculum属の細菌である可能性が示唆されたが、これを評価するためには、Allobaculum属の細菌を単離して、無菌マウスに定着させて肥満評価を行う必要があると考えているので、今後の実験していく計画である。さらに、老化促進モデルマウスの検討については、40週齢前後のSPFマウスはブリーダーから購入可能であったため、購入した加齢のマウスを使用し、加齢マウスはYoungマウスと比較し肥満や耐糖能異常である状態は確認できたため、今後は40週齢前後のSPFマウスを購入し、加齢に伴う肥満を予防する実験に使用していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、腸内環境改善による加齢に伴う肥満予防を目的に実験を行う予定である。40週齢前後のSPFマウスを購入し、5%プレバイオティクス(フラクトオリゴ糖を予定)を含むAIN-93M飼料とプレバイオティクスを含まないAIN-93M飼料を与え、体重増加量、血糖値、脂肪量の評価を行う。また、腸内細菌叢解析も行いプレバイオティクス投与により変動する腸内細菌を同定する。さらに、これまでの結果からAllobaculum属の細菌の増加が肥満を誘発する可能性もあるため、無菌C57BL/6N雄マウスにAllobaculum属の細菌を定着させ、肥満評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は研究成果を学会で報告するため旅費を申請していたが、学会発表する前に論文投稿を先に行うことを優先し、今年度の学会発表は取りやめたため、旅費の分を繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度中には論文を投稿予定であるため、論文を投稿し来年度中に学会発表を行い旅費を使用する予定である。
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