研究課題/領域番号 |
16K18714
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
渡辺 洋一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 特任助教 (30763651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 平行進化 / 渓畔適応 / ゲノムワイド / RNA-seq / 花期変異 / 進化生態学 / 集団遺伝学 |
研究実績の概要 |
渓流沿い植物は、近縁種と比べて特徴的に細い葉を有することで洪水耐性を獲得したと考えられている植物群で、シダ植物から被子植物まで多くの分類群で確認されている。本研究は、渓流沿い植物の1つであり園芸植物としても広く利用されるサツキ(ツツジ属)に着目して中立的・適応的な進化過程を解明する事を目的としている。 MIG-seqを用いたゲノムワイド解析を分布を網羅した集団サンプルを対象に行った結果、サツキは大きく2地域間で分化しておりそれらは単系統群とならず、2系統はそれぞれ近縁種より派生したような樹形となった。つまり、サツキは平行的に進化した可能性が考えられ、それはABC解析からも支持された。加えて、サツキにおける系統樹のパターンは他研究者によって解析されたAFLPの結果や申請者によって行われた高精度なRAD-seqの結果からも支持されている。草本類ではこのような例は複数知られているが、木本類では非常に稀な例である。興味深いことに、サツキの2系統は遺伝的には全く異なるものの渓流沿い植物の代表的な形態である葉型での判別は非常に難しく、花期が近縁種よりも遅く5月末から6月に開花する共通点も有している。この中立な領域に基づく進化過程の結果は論文投稿を行い、既にonlineで公表されている。現在は、遺伝的変異の全く異なる別の進化的背景を有すると考えられる2系統のトランスクリプトーム変異の検出を目的として、次世代シークエンサーを用いたRNA-seqを行いデータ解析に多くの時間を費やしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度は教員着任に伴い、教育関連業務との研究バランスが取りづらく、ほとんどの時間を本申請課題の論文執筆に費やした。また、F2系統の作出のために播種試験を行ったが、虫害により多くの個体を枯らしてしまい、genotypingを行うには個体数が不十分なため本年度追加で播種を行う。RNA-seqのデータ解析は偽陽性を避けるために様々な視点から解析を行っており、結果が待たれる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、RNA-seqで得られたデータの解析を行い候補遺伝子の抽出を行う。順調に進めば候補遺伝子の配列を集団サンプルで決定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が生じたため、次年度経費と併せて実験経費や出張旅費などに充てる。
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