研究実績の概要 |
本研究の目的は、保残伐施業による生物多様性保全の保全効果を評価することである。保残伐施業とは、伐採時にあえて樹木を伐り残すことで生物の棲家を確保し、多様性の保全を図る施業方法である。本研究では、これまで生物多様性の指標として広く用いられてきた「生物種数(α多様性)」に加えて、「β多様性」や「系統的多様性」を分析することで、多様性形成の裏にあるメカニズムも合わせて明らかにする。対象分類群は土壌微生物とする。 初年度となる今年は、主に野外調査と土壌微生物DNAの分析を行った。具体的には、2016年5月20日から9月23日にかけてフィンランドに滞在し、保残伐施業が実施されているFIRE試験地において、調査プロット(n=192)を設置した。調査プロットにおいて、土壌サンプルを採取した。プロット内の植生調査(維管束植物、蘚苔類、地衣類)を行った。プロット周辺の樹木の毎木調査を行った。各プロットに分解基質となるティーバッグを設置し、分解速度を測定した。レジンコアを設置し、土壌の無機態Nのリーチング量を測定した。東フィンランド大学にて、土壌サンプルの化学分析を行った(pH, 無機態N, 含水率)。帰国後、土壌サンプルからDNAの抽出を行った。菌類特異的プライマーを用いて、PCR増幅を行った。また、FIRE試験地で過去10年間集められてきた植生群集データを使ってβ多様性の変化を解析し、その結果を学会発表した。
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