本研究の目的は、保残伐施業による生物多様性保全の保全効果を評価することである。保残伐施業とは、伐採時にあえて樹木を伐り残すことで生物の棲家を確保し、多様性の保全を図る施業方法である。本研究では、これまで生物多様性の指標として広く用いられてきた「生物種数(α多様性)」に加えて、「β多様性」や「系統的多様性」を分析することで、多様性形成の裏にあるメカニズムも合わせて明らかにする。対象分類群は土壌微生物とする。 二年目となる本年度は、土壌微生物のDNA分析と予備解析、学会発表、論文執筆・投稿を行った。具体的には、保残伐施業が実施されているフィンランドFIRE試験地で採取した土壌サンプルからDNA抽出・PCRを行った。Miseqシーケンスで得られた塩基配列情報をバイオインフォマティクス手法によって整理し、192地点における土壌菌群集データを取得した。多変量解析手法および階層ベイズモデリングを使って、保残伐地および皆伐地・非伐採地の間で土壌菌の種数・組成を比較した。また、森林復元活動が行われている試験地の土壌菌群集データを使ってα・β多様性の変化を解析した。その結果を学会発表、および論文にまとめ、国際英文誌に投稿した(現在査読中)。
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