中国半乾燥地の移動砂丘固定において、埋砂条件下で高い萌芽性と生存率を維持する小葉楊は重要な緑化樹種である。本研究では小葉楊の萌芽促進に影響する環境要因と萌芽性維持にかかわる形態的特性の特定を目的に以下の調査を行った。 砂丘植林地での萌芽頻度と根系分布を調査し、移動砂丘面での萌芽性と土壌深度との関係性を検討した。昨年度から中国内蒙古自治区クブチ沙地砂丘植林地での現地調査を行った。調査地は砂丘中部(斜面)、砂丘上(凹凸地)、砂丘下部(平坦地)の三地点で設置した。発生した萌芽シュートサイズおよび発生数を従属変数とし、根系深度、萌芽発生根の直径、根長、母樹からの距離、母樹サイズを説明変数として一般化線形回帰モデルによる変数選択を行った。その結果、萌芽サイズおよび萌芽発生について母樹サイズと根長、土壌深に影響されることが示唆された。 萌芽シュートの生存・発達と埋砂による環境変化との関わりを検討するため、根系への遮光処理が萌芽発達に及ぼす影響を検討した。異なる埋砂環境で萌芽していない根系をランダムに選定し、環状剥皮とサイトカイニン(BAP)処理によって萌芽誘導を試みた。冠状剥皮、BAPと遮光を組み合わせた処理区を設定し、萌芽発生数と発生した萌芽数を比較した。その結果、環状剥皮およびBAPによって誘導された葉芽および萌芽シュート発達は、遮光処理によって抑制される傾向を示した。 以上の結果、小葉楊の萌芽は浅深度に広範囲に分布した根系から発達すること、サイトカイニン優勢になった根系から葉芽発達が促進されるが、弱光環境ではシュート発達に抑制されることが示された。小葉楊の高い萌芽は移動砂丘周辺の退砂による偶発的な根系の露出によって促進されると考えられるが、そのためには浅深度に広範囲に発達した根系が不可欠であることが示唆された。
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