研究課題
適所適材という文化が古くから根付き、様々な木質文化財を多く有する日本においては、樹種の情報を抽出することは、考古学・美術史・建築史といった様々な分野に おいても重要であることからより重要度が増している。従来、樹種識別には、木材組織の顕微鏡観察といった作業ならびに木材組織における専門的知識が必須であったため、より汎用性が高い、非破壊かつ簡便でオンサイトな手法の開拓に重きが置かれてきた。 昨今増加している歴史的建造物の修理における部材調査においては、樹種情報から当時の木材流通や植生といった様々な情報が得られるが、膨大な数の部材を調 査する必要があるため、オンサイトでの調査の必要性が増していた。そこで本研究では近赤外スペクトルと統計的判別手法を組み合わせた非破壊手法であるケモメトリクス解析に注目し、ポータブル型近赤外分光法を活用した実用的なシステム構築を目指した。これまでに、京都大学材鑑調査室に保管されている現生の有用樹種のうち、歴史的建造物に多く使用されている例が多い樹種を中心に、卓上型NIRおよびポータブルNIRによるデータの獲得ならびに解析を進め てきた。現生材については、複数の樹種間については判別を可能としてきたが、古材については試料の劣化状況や水分量の変化などの原因などにより判別精度が非常に下がるものもあり、現段階での樹種識別は不可能であり、現在継続して精査を進めている。特に茶室建築や建造物に使用されるアスナロ属には、東北地方に多いヒノキアスナロと本州でも生育するアスナロという種類があり、これらを分けることがで きれば、茶室や建造物に使用されているアスナロ属の当時の北前船流通をはじめとして重要な知見となる。しかし現段階では分類ができていない。そのため、2019年度DNAによる分類を計画中である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)
建築史学
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