細胞壁のセルロースミクロフィブリルの配向角度は、木材の強度を決定する要因の一つである。本課題では、セルロースミクロフィブリルの配向性を細胞内で制御する表層微小管に着目し、細胞内での表層微小管の空間配置を制御する分子機構の解明を最終目標としている。これまでの研究からポプラにおいて表層微小管の密度と平行性を制御する新規転写遺伝子(TF26遺伝子及びTF34遺伝子)を同定している。昨年度に引き続き、本年度もTF26遺伝子を中心に遺伝子の機能解析を進めた。TF26遺伝子及びそのパラログTF26b遺伝子を破壊した組換えポプラの幹をサンプリングし、透過型電子顕微鏡を用いてS1層、S2層、S3層の観察に着手した。また、TF26・TF26b遺伝子欠損ポプラの木部組織を用いて細胞壁成分の化学分析を行ったところ、遺伝子欠損ポプラではS2層およびS3層に高蓄積する細胞壁成分が減少することを明らかにした。これらの結果は、TF26遺伝子及びTF26b遺伝子がS2層およびS3層の堆積に寄与していることを示唆している。次に、TF26遺伝子及びTF26b遺伝子とポプラNST/SNDオルソログが互いに直接的または間接的に転写制御するかどうかを調べるために、各遺伝子にグルココルチコイド受容体ドメインを連結した遺伝子コンストラクトを作成しポプラに形質転換を行った。作成した組換えポプラを用いて懸濁培養細胞を作成し、グルココルチコイドおよびシクロヘキシミドを単独もしくは同時に添加することによりターゲット遺伝子の発現変動解析を行った。
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