研究課題/領域番号 |
16K18737
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高巣 裕之 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 助教 (00774803)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 海洋 / 有機物 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
本研究は、海洋食物連鎖系の栄養的基盤である懸濁態有機物の栄養価が、微生物群集による分解・変質を受けることで変化し、懸濁態有機物の餌資源としての有用性(栄養価)が大きく変化するという「細菌による栄養価変換仮説」を検証することを目的としている。 本年度は、まず高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるアミノ酸分析の立ち上げを行った。一般に、海水のアミノ酸分析の蛍光誘導体化には、高感度なOPA(o-フタルアルデヒド)法が用いられるが、この方法では二級アミンのプロリンなどは誘導体化されないため、検出できないという問題点があった。そのため、本研究では二級アミンも誘導体化可能なAQC(6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート)を用いた誘導体化の海水試料への適用を試みた。AQC誘導体化とHPLCを組み合わせた分析法による分析条件を検討した結果、19種類のアミノ酸を定量することができた。AQC法はOPA法と比較すると、検出感度が劣るため、海水中有機物の分析例は極めて少ない。本方法を用いて、大村湾から採水した溶存態画分の分析に適用した結果、数種のアミノ酸は検出限界以下であったものの、検出されたアミノ酸に関しては繰り返し測定による変動係数が数%以内に収まり、良好な結果が得られた。 また、当初の予定にはなかったが、2016年11月に日本海洋開発機構の新青丸KS-16-18次航海、2017年3月にKS-17-1次航海に乗船することができたため、大槌湾、釜石湾、女川湾内および、それぞれの湾の東方沖の観測点にて、酵素分解性アミノ酸分析に供試する懸濁有機物試料の採取を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AQC誘導体化を用いた海水中アミノ酸の分析方法の検討は、年度内に概ね完了した。しかし、当初は2015年7月を目処に分析方法の立ち上げ完了を想定していたが、実際は条件検討に時間を要したため、2016年3月まで分析方法の検討を続けることとなった。その大きな理由としては、クロマトグラム上に、誘導体化試薬由来の妨害ピークが大きく出てしまい、アラニンのピークと重なってしまい、分離の検討に相当時間を費やすことになったことが挙げられる。実際は、業者より購入した誘導体化試薬が劣化していたことが原因とわかり、現状ではこの問題は解消されたが、このことが原因で条件検討に大幅な時間を取られ、当初の予定にあった酵素分解処理を施した有機物のアミノ酸分析の立ち上げや添加培養実験までは行き着かなかった。 しかし、当初の予定にはなかったが、2016年11月に日本海洋開発機構の新青丸KS-16-18次航海、2017年3月にKS-17-1次航海に乗船することができたため、大槌湾、釜石湾、女川湾内および、それぞれの湾の東方沖の観測点にて、酵素分解性アミノ酸分析に供試する懸濁有機物試料の採取を行うことができた。これは、当初は2017年度に行う予定であったため、試料採取に関しては、予定よりも順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初2016年度に実施予定であった酵素分解処理を施した有機物のアミノ酸分析の立ち上げや添加培養実験を2017年度の4月~9月にかけて実施する。また、実際の現場試料の分析に関しては、すでに新青丸KS-16-18、KS-17-1次航海で採取したものがあるため、酵素分解性アミノ酸分析が立ち上り次第、分析に取り掛かることで、計画の遅れは十分取り戻すことが可能である。2017年12月までにすべての分析を終え、データの解析、数理モデルの開発に取り掛かる。2018年3月までにすべての結果をまとめ、日本生態学会において研究成果を発表する。また、論文執筆に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が38円と極めて少額であり、購入できる物品等がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
38円と極めて少額であるため、次年度使用計画の一部として使用する予定である。
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