研究課題/領域番号 |
16K18738
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
隠塚 俊満 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (00371972)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 鞭毛藻 / 珪藻 / 感受性差異 |
研究実績の概要 |
作用機構の異なる11種の除草剤について、鞭毛藻ヘテロシグマ(Heterosigma akashiwo)及び珪藻キートセロス(Chaetoceros spp.)に対する毒性を検討した結果、光合成阻害の作用を持つ3種の除草剤(ジウロン、ブロマシル、アイオキシニル)及び微小管重合阻害の作用を持つトリフルラリンについては、ヘテロシグマよりキートセロスが2倍程度高い感受性を示し、プロトポルフィリノーゲン酸化酵素阻害作用を持つオキサジアゾンについては、逆にキートセロスよりヘテロシグマが20倍程度高い感受性を示した。そのため、これらの除草剤の曝露により海産微細藻類の優先種に変動が生じることが示唆された。その他の6物質については、今回設定した最高濃度区1000μg/Lの曝露区において、何れの藻類についても生長速度を半減させる効果は認められなかった。 6から7月を中心に10回、田尻港、芦田川河口域及び芦田川河口堰上流の環境水を採取し、10種類の除草剤濃度を測定した。その結果、ブロモブチド(<30-171 ng/L)、ブロマシル(<56-224 ng)、プレチラクロール(<15-86 ng/L)、シアナジン(<39-95 ng/L)の4種が検出された。また、今回モニタリングした除草剤以外の除草剤について分析手法を検討し、感受性を検討した11種のうち8種について液体クロマトグラフ質量分析計またはガスクロマトグラフ質量分析計を用いて分析法を確立し、今年度測定した物質に加えて、これらの除草剤をモニタリングすることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は大きく分けて「1. 作用機構の異なる除草剤のうち、藻類間競合関係に影響を及ぼす除草剤を推定する」、「2.赤潮発生海域において、除草剤の海水中濃度を測定する」、「3.除草剤に対する藻類種間の感受性の差異の要因を明らかにする」の3つの研究課題から構成されている。1.については作用機序の異なる11種の除草剤について鞭毛藻および珪藻の代表種について感受性の差異を明らかにしており、計画通り進んでいると思われる。2.については、除草剤の物性が大きく異なるため、分析手法を詰め切れておらず、分析サンプルを前処理の途中で保存している状態であり、計画よりやや遅れている。3.については平成29年度以降の検討予定の項目であり、平成28年度の進捗評価は必要ないと思われる。以上の事から、本研究の進捗はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、赤潮の原因となる鞭毛藻及びその競合生物である珪藻類に対する各種除草剤の毒性を測定して藻類間競合関係に影響を及ぼす可能性の高い除草剤を推定する。また、実環境中に近い低栄養条件下において同様の検討を行い、除草剤と低栄養の相乗効果について測定を行う。影響を及ぼす可能性が高いと推定した物質を被検物質として藻類間競合関係における被検物質の影響を明らかにする。さらに、薬剤代謝酵素などの活性や発現解析を実施し、感受性の差異の原因の解明を試みる。 昨年度に引き続き、瀬戸内海など赤潮発生海域における海水中の除草剤濃度を測定する。分析手法が確立した除草剤については順次モニタリングに加え、できるだけ多くの除草剤をモニタリング可能な手法を模索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
海水中除草剤濃度の測定を最後まで実施する予定であったが、分析法を最後まで検討できず分析が完了していないため、予算の繰り越しが生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
海水中除草剤濃度の測定がやや遅れ気味であるため、測定法の検討および海水中濃度の測定を実施することで、予算消化を進める予定である。
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