研究課題/領域番号 |
16K18746
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研究機関 | 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究代表者 |
奥津 智之 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 水産領域, 主任研究員 (40456322)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バナメイエビ / 卵巣成熟 / 分子マーカー / マイクロアレイ / クルマエビ科 |
研究実績の概要 |
11ヶ月齢の成体(40~60 g・BW)より摘出したステージ1(未成熟, N=6)とステージ4(成熟, N=6)の卵巣について、我々の開発した29,917個のプローブを搭載したバナメイエビ用DNAマイクロアレイを用いた発現遺伝子の網羅的な比較解析を実施した。その結果、両区間で発現量に有意な差のあるものとして3,192遺伝子が見つかり、そのうち、418遺伝子は成熟卵巣で発現量が高く、2,774遺伝子は成熟卵巣で発現量が低くなっていることが明らかとなった。上記遺伝子のうち、成熟卵巣で発現量が特に高かったGamma interferon inducible lysosomal thiol reductase (GILT) およびAnti-lipopolysaccharide factor-like protein (ALF)遺伝子、ならびに成熟卵巣で発現量が特に低かったNeuroparsin 1およびThrombospondin遺伝子について、各卵巣ステージ(1および4)のcDNAを鋳型としたRT-PCRを行った結果、GILTおよびALFはステージ4の成熟卵巣のみで、またNeuroparsin 1はステージ1の未成熟卵巣のみで増幅バンドが確認された。以上、本年度の研究より、GILTとALFおよびNeuroparsin 1の各遺伝子がそれぞれ成熟卵巣および未成熟卵巣の分子マーカーとして利用可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バナメイエビ成体より摘出した成熟卵巣と未成熟卵巣について、当初計画通り、発現遺伝子の網羅的な解析を実施し、その結果、発現量に差のある3,192遺伝子が見つかった。この中から、特に発現量の差が顕著なものに着目して詳細な解析を実施した結果、卵巣成熟段階の分子マーカーとして使用可能な3遺伝子(GILT, ALF, Neuroparsin 1)を同定することに成功した。これは、卵巣成熟に関する分子情報が不足しているエビ類においては、重要な知見である。以上のように、本年度の目標としていた卵巣成熟の分子マーカーの同定が達成できており、概ね予定通りの進捗状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度のマイクロアレイ実験で得られた網羅的発現遺伝子データについて、Gene ontology(GO)解析による遺伝子群の機能分類(分子機能 molecular function、生物学的プロセス biological process、細胞内構成要素 Cellular component 等)やPathway 解析等を実施し、卵巣成熟過程の分子カスケードを明らかにする。特に、前年度に同定された卵巣成熟マーカー分子についてin situ hybridization 法を用い、組織内における詳細な発現部位を特定する。ここで得られた結果と上記GO 解析およびPathway 解析の結果を併せることで、前年度に同定された分子が卵巣成熟過程でどのような役割を担っているかの予測が可能になるものと期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算配分が限られた中で、本年度に得られた基盤情報を最大限に活用するために、次年度への繰越額をできる限り多く確保した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度に実施した試料以外を用いたマイクロアレイ解析、およびin situ hybridization等のマイクロアレイ以外の実験のための試薬等に使用する予定。
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