本研究は、エビ類の免疫系の一端を解明してウイルス病の新規診断法の確立を目指すものである。 本研究で用いる病原体を得るため、インドネシアのジェパラにあるMain Center for Brackishwater Aquaculture (MCBA) にて、病原体感染エビの作製を行った。伝染性筋壊死症ウイルス(IMNV)を解凍し、現地で入手した平均体長 5 cmのバナメイエビ11個体に注射した。注射後3日目におい5個体中4個体のサンプルからRT-PCRで陽性のバンドが検出された。こうして作製したIMNV感染エビを-80℃で凍結して輸入し、当研究所での実験に用いた。 その後、産休の後、クルマエビにおけるWSSV(DNAウイルスモデル)とIMNV(RNAウイルスモデル)感染時のウイルスの組織局在性と宿主の遺伝子発現パターンを調べるため、水温25℃においてWSSVとIMNVをクルマエビに注射し、in situ ハイブリダイゼーション(ISH)および鰓、リンパ様器官、血リンパにおける遺伝子発現解析を行った。 WSSV感染区のクルマエビの頭胸部および腹部において、WSSVのエンベロープ構成タンパク質の一つであるVP28をターゲットとし、ISHによるWSSVのVP28遺伝子の検出を試みたところ、胃の上皮細胞やリンパ様器官などで検出された。免疫関連遺伝子については、活性酸素合成系の遺伝子、造血、免疫、幹細胞維持に関与するJAK/STATシグナル伝達経路ではSOCS、RNA干渉経路ではDicer2、Argo2、サイトカイン関連遺伝子ではVEGF1、I-17受容体2、免疫応答や炎症の制御に関わるp38などの遺伝子の発現が増加傾向にあった。 他方IMNV区に関しては、産休中にウイルスが失活し、ISHによるウイルスの組織局在性や免疫関連遺伝子の発現動態を明らかにするには至らなかった。
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