研究課題/領域番号 |
16K18756
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
河野 洋一 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (80708404)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経営主体 / 経営者能力 / 後継者育成 / 能力育成 / 技術継承 / 醸造業 |
研究実績の概要 |
初年度は,まず,調査対象者らと研究課題および研究計画の共有を目的としたミーティングを各地域で実施し,円滑な研究課題の解明に向けた研究体制を構築した。次に,主たる調査対象者である後継者,また,組織内外で当該後継者の能力の向上に係わる人材育成等を実施している経営者やその他の人材に対するヒアリング調査を実施した。さらに,農業の後継者固有の経営者能力の把握と,人材育成を明らかにするために,対象事例として醸造業経営における後継者の能力および人材育成について整理した。理由として,醸造業は,伝統産業かつ小規模経営が多いことと,基本的に製造期間が長期間必要となるため,一年一作の農業経営に類似した技術継承等が実施されていることが想定されたためである。 具体的な研究成果として,醸造業における後継者能力と人材育成に関する以下の知見を得た。まず,後継者は就業以前より自社内の問題点・課題等を明確にしていることがわかった。これは,現経営者との共同生活を通じて,経営の問題点等を恒常的に議論していく過程で育成された能力であることが示唆される。次に,それらの問題点等を解決するために自らの意思で知識・技術を習得することで能力育成を行っていることがわかった。これは,後継者の義務教育終了後より,大学での専門的な学びや課外での同業他社での研修などといった自主的な経験・学習を通じて育成されており,後継者の主体的な活動が能力育成に重要な役割を果たしている。最後に,育成した能力で不足している部分は多様な経験により構築されたネットワークにより補完していることが後継者の能力育成に大きく貢献していることがわかった。具体的には,本業の専門知識・技術以外の,宣伝・広告,デザイン,資金調達手段など,多くは経営面での技術に係わる能力を補うためにネットワークを活用しており,継続的な経験・学習を通じた能力育成を達成していることが考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度夏期に発生した北海道地域の台風被害によって,当初計画していた北見地域の農業経営者への継続的な調査が困難になったため,同地域内で類似した経営を展開し,そのなかでも比較的被害が軽度であった農業者へ調査対象を変更することで,後継者の能力育成およびそのプロセスについて調査・研究を実施することが可能となったため,研究計画に大きな変更はなく,順調に進展しているといえる。 また,農業の後継者固有の能力を把握するために比較対象として醸造業を選定しており,研究成果として既に投稿済みであることから,効率的な研究活動が実施できているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後,農業経営における後継者固有の経営者能力とその育成プロセスを明確にし,能力育成マニュアルを作成するため,以下の研究課題に着手する。まず,新規就農者,新規参入者,離職就農者等,就農のプロセスによる,能力育成プロセスの共通点や差異を明確にする。これについては,平成29年度夏期に福岡県,兵庫県,北海道内各地域で調査予定であり,調査対象者とは既に連携済みである。 また,農業においては,国や自治体によって農業特有の研修制度や研修施設が整備されていることや,農業の後継者に対する多様な支援,また,JAなどの協同組合によって生産者同士の関係が密接であることで,豊富かつ多様な研修の選択,同業者の「学びあい」,現経営者からの技術継承などといった人材育成が展開されている可能性が考えられる。そのため,農業に関連する研修施設の運営主体や研修の実施者,JAなどの担当者に対するヒアリング調査を継続的に実施することで,就農経路に応じた能力育成プロセスを明確にし,能力育成マニュアルの完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度夏期に発生した北海道地域の台風被害により,当初計画していた北見市内の農業経営者である調査対象者への継続調査が困難になり,調査対象者の変更および当該対象者等に対する研究計画,調査内容等の共有のためのミーティングや実際の調査の回数を減らさざるを得なくなってしまったため,次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度中に台風被害が比較的軽度であった農業経営者に調査対象者を変更しており,既に,研究計画等についての情報共有は達成しているが,台風被害によって当該年度中に,実施することが出来なかった北見市内の農家調査のために使用する予定である。
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