平成29年度の研究では、熊本県や埼玉県、静岡県における農業参入企業の先進事例地域への調査を行うことができた。今年度の調査では、農業参入企業の農業経営だけではなく、その企業が展開する自治体、地域がどのような意図で企業を誘致し、支援を行ってきたかについての調査を行った。 これらの調査研究に基づいて、平成29年度には図書として『一般企業の農業参入の展開過程と現段階』を出版するとともに、研究雑誌において「企業の農業参入に関する制度変遷と実態 (特集 農水産業に乗り出す交通事業者) 」を投稿した。 図書においては、当科研費事業の研究成果と今までの研究成果を盛り込んだものであり、一般企業の農業参入が展開した背景と地域の受入状況、そして、農業参入企業の参入目的、農業経営の取組みについて分析し、一般企業の農業参入について政策から経営実態まで体系的にまとめることに務めた。また、農業参入企業の農業経営についてヒアリング調査に基づいて検証し、農業参入企業が、農業経営における加工・販売等の領域については独自又は特徴的な取組みにが見られるのに対し、直接的な農業生産においては独自性・新規性が少ないこと明らかにし、企業経営全体における農業部門の位置づけでも、農業経営部門を高収益部門としていなことを示した。そのため、農業参入企業は地域農業の新たな担い手であり、地域農業の活性化においても有効な担い手であるが、我が国の地域農業構造を変えるわけではなく、既存の担い手と同じような担い手となることを明らかにした。 「企業の農業参入に関する制度変遷と実態 (特集 農水産業に乗り出す交通事業者) 」では、農業参入企業の農地取得制度の変遷を踏まえて、農業参入企業の展開にどのような影響を与えているか示した。 また、平成29年度にベトナムの大学における国際学会の報告依頼を受け、平成30年度に研究発表を行うことが確定している。
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