研究課題/領域番号 |
16K18758
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 昂也 九州大学, 農学研究院, 助教 (70757955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 農業経済学 / 農産物貿易 / 製品差別化 / 計量経済分析 / 貿易自由化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、農産物の貿易自由化および国産農産物の輸出拡大が進められているわが国の現況を踏まえ、国産農産物の海外産に対する製品差別化の程度とその時系列変化を計量経済学的に明らかにすることを通して、国内農業の支援策や成長策についての知見を提供することである。 今年度はまず、農産物の製品差別化の計量経済分析に関する文献レビューを行うとともに、国内市場および海外市場のデータセットの整備を行った。 また、需要体系モデルを用いて国内の食肉需要構造を推計した後、環太平洋経済連携(TPP)協定の影響についてシミュレーション分析を行った。分析の主な結果は、次のとおりである。第1に、和牛肉および交雑牛肉は輸入牛肉と差別化されているものの、乳用牛肉は輸入牛肉と競合関係にある。第2に、TPP協定によって、和牛肉および交雑牛肉の需要量に有意な影響があるとは言えないのに対して、乳用牛肉の需要量は8.6%減少する。また、国産牛肉全体の需要量が2.6~5.2%減少し、輸入牛肉の需要量が26.7%増加する結果、牛肉全体の需要量は13.7~14.7%増加する。第3に、TPP協定によって、国産豚肉、輸入豚肉、国産鶏肉および輸入鶏肉の需要量に有意な影響があるとは言えない。第4に、1991年の牛肉関税化後においては、和牛肉の生産拡大が乳用牛肉等の生産縮小を埋め合わせることによって、貿易自由化の影響が緩和されたが、TPP協定発効後においては、同様の影響緩和効果を期待することができない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内市場における製品差別化の計量経済分析において、当初の計画で想定していた分析を一部終わらせることができなかったものの、全体的には概ね順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、前年度に終わらせることができなかった分析を完了させるとともに、海外市場における国産農産物の製品差別化の計量経済分析を行う予定である。 また、平成28年度の終盤に、大筋合意していたTPP協定の発効が不透明な状況になったため、今後は2カ国間の自由貿易協定(FTA)も視野に入れた分析を行う予定である。
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