研究課題/領域番号 |
16K18760
|
研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
野口 敬夫 東京農業大学, 国際食料情報学部, 准教授 (70584564)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 食肉サプライチェーン / 貿易自由化 / 低需要部位 / 熟成肉 / 粗飼料 / アメリカ |
研究実績の概要 |
まず、食肉サプライチェーンを取り巻く制度的環境条件を把握するため、食肉に関わる貿易協定・合意内容、農林水産省の政策・補助事業等について文献資料や統計資料を用いて整理するとともに、実態調査を行った。 特に食肉供給に関連する新たな政策では生産・加工・流通及び販売業者が一体となり脂肪交雑以外の品目に着目した国産牛肉のバリューチェーンを構築するために、新需要創出や低需要部位を利用した加工品開発が補助事業として進められており、その取り組みについて検討を行った。
次に、食肉供給に及ぼす影響が大きい飼料に焦点をあて、その供給の現状と課題を検討した。飼料は生産コストの大部分の割合を占めており、その価格動向が食肉価格に大きな影響及ぼすだけでなく、食肉のブランド化は飼料による差別化が多いことから品質面においても重要となる。 粗飼料については自給率が2010~2015年では約76~78%と概ね横ばいで推移し過度な変動は無いものの一定量の粗飼料が継続して輸入されている。しかし、2000年代後半以降、日本の主な輸入先であるアメリカで粗飼料需給に変動がみられ生産が減少する一方、国内需要やUAE・中国向けなど輸出需要が拡大し、粗飼料の生産者販売価格が上昇している。さらに、主要な価格変動要因である為替レートについても円安が進展したため、日本の輸入価格の高騰に拍車をかけている。そこで、アメリカにおける粗飼料生産・輸出構造の変動と日本の粗飼料輸入の現段階について検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の前期に実施予定であった食肉に関わる貿易協定・合意内容、農林水産省の政策・補助事業等について文献資料や統計資料を入手し、食肉サプライチェーンを取り巻く制度的環境条件を取り纏めた。 また、食肉供給に関連する政策・補助事業の取り組みを具体的に検討し、国産食肉のバリューチェーンの構築を目的として進められる新需要創出の取り組みについては熟成肉の製造・販売を行う企業行動、低需要部位を利用した加工品開発については徳島県と兵庫県の地鶏の加工・販売展開に関して原稿を取り纏め、2016年度日本農業市場学会においてセッション報告を行った。
後期の実施予定であった飼料供給についても、文献・統計資料の収集及び実態調査を行った。特に粗飼料に焦点をあて、アメリカにおける粗飼料生産・輸出構造の変動と日本の粗飼料輸入の現段階について検討し、これについては原稿として取り纏め、2016年度日本農業市場学会大会で報告発表を行い、研究の高度化に努めた。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度明らかにした食肉サプライチェーンを取り巻く制度的環境条件や飼料供給の実態などを踏まえ、今後は牛肉・豚肉サプライチェーンの検討に入る。このサプライチェーンのなかで、基本的に素畜供給、生産~処理・加工段階までは産地、卸売・小売段階については消費地が該当することから、産地調査と消費地調査に分けて研究を進める。 産地調査は肉用牛・肉豚の飼養頭数が多い地域を事例対象として、地方行政や生産者団体、集荷・処理業者などへヒアリングを行い、産地流通やブランド化の取組み、各主体の事業戦略、地方行政の補助事業などを明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた飼料供給に関する実態調査のうち、飼料穀物を原料とする濃厚飼料の調査については、調査対象地及び相手先の選定と都合によって、次年度に計画している牛肉・豚肉産地への実態調査と同時に実施することになったためである。
|
次年度使用額の使用計画 |
牛肉・豚肉サプライチェーンにおける産地への実態調査の期間を延長するとともに、濃厚飼料の供給に関する団体や業者に対して、調査を実施する。
|