研究課題/領域番号 |
16K18767
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
冨吉 満之 久留米大学, 経済学部, 准教授 (20506703)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 柑橘 / 五木村 / 八代市 / 江戸東京野菜 / 四川省 / 中央卸売市場 / 農業協同組合(JA) / 食育 |
研究実績の概要 |
今年度は柑橘(かんきつ)を主な対象として、民俗学および分析科学といった領域から、多様性や機能に関する検討を行った。民俗学の観点では、柑橘の伝承とルーツについて熊本大学文学部の鈴木寛之准教授と連携して現地調査を行った。具体的には、五木村の九年母や八代市の高田みかんについての現地調査を行い、保全や利用の状況、関係する主体に関する情報収集を進めた。その後、2018年9月29日に第2回在来種フォーラムを開催し、生産者や一般市民などへの活動成果の発信を行った。 次に、多様性の指標に関しては、2018年12月および2019年3月に食農環境研究会を開催してゲストより、「農作物在来種の利用と保全」「中山間地域における小規模な作物生産と在来品種の利用」といったテーマで講演頂くと共に、分析方法、や調査対象についての情報交換を行った。 また、能登半島における食文化、自家採種との関連性について、既に投稿している論文の修正作業を行い、評価モデルについて引き続き検討を進めた。 2018年9月には、中国四川省において食農文化についての現地調査を行い四川料理と地域農業の関係性についての情報収集を進めた。国内の伝統野菜に関しては、他に京野菜(スグキ・九条ネギ)、江戸東京野菜に関わる生産者や飲食店などへの現地調査を実施し、生産・利用の特性についてヒアリングを行った。 福岡県内の在来品種に関しては、「博多ふるさと野菜」の取り組みを進めてきた藤枝國光氏へのインタビューを進めると共に、久留米市内(北野町)の山汐菜(やましおな)の栽培状況について、引き続き調査した。結果、JAに生産部会があり加工・販売・流通の下支えをしていることや、近隣の学校での給食での提供といった形で、地域の様々な機関が関わることで生産が維持されている状況が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 熊本・福岡での調査が順調に進展したこと、(2)研究協力者などとのディスカッションの中で、多様な分野から本研究のモデル構築に寄与する情報を得ることができたこと、(3)中国四川省での調査により食文化(特に漢時代に形成された四川料理の文化)と農業との関わりについての基盤情報を収集することができ、食農文化の評価に関して重要な示唆を得たことでが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
中国での調査について、社会科学院の若手研究者や島根大学の研究者らの協力を得ながら進める。国内調査については、鶴岡市などを候補地とし中国四川省との比較分析を行うこと目標とする。岐阜県内についても、岐阜大学の若手研究者の協力を仰ぎつつ進める。これまで得られた研究成果をとりまとめ、国際コモンズ学会(ペルー)および米国農村社会学会(USA)において発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(1)調査協力者である中国社会科学院による現地コーディネートが円滑に進んだため、海外調査費用を予定より低く抑えることができたこと、(2)研究代表者の家庭の事情(子育て)により、計画していた韓国での調査を延期したこと、(3)国内調査は近距離のサイト(福岡・熊本)を中心に実施したため、国内旅費の支出が少なくて済んだことといった理由による。 2019年度には再度、中国での現地調査を実施する予定である。また、比較対象の台湾への調査も並行して実施する。更に、調査資料の整理やデータ入力といった研究補助に対する人件費(謝金)を申請時の計画よりも重点化し(具体的には2名体制にする予定)、研究の取りまとめ作業を円滑化する。 最後に、研究成果の発信のため、2019年度に開催予定の国際コモンズ学会(ペルー)および米国農村社会学会(RSS:米国)での学会発表を予定しており、海外出張、学会発表に関わる支出を予定している。
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備考 |
・研究会の開催(食農環境研究会、2回:京都)、食農セミナーの開催(2回:久留米大学) ・西日本新聞 「久留米大の挑戦 創立90年<9>ブランド化 「くるめ野菜」売り込め」2018年4月2日(朝刊)
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