本研究は、地域の共有林である入会林野について、近年全国的に進んでいる記名共有名義の入会林野の認可地縁団体名義への変更の動きに見られる入会権の変容を検証することを目的としている。なお、入会権の権利の変容を捉える際には、入会林野の所有名義と連動する、入会集団の法的な形態の変更に着目することとする。 本年度は、神奈川県秦野市、京都府京丹後市、新潟県糸魚川市等において現地調査を行った。秦野市では、記名共有名義の入会林野の動向について調査したほか、京丹後市、糸魚川市の現地調査では、森林組合法の一部改正により設けられた組織変更の制度が生産森林組合に与えた影響について調査を行った。生産森林組合や他の所有名義から認可地縁団体へと移行する場合、従来の入会権が個別的な権利ではなく団体として持っている権利として認識されていることが確認された。一方で記名共有名義を取る入会林野では、認可地縁団体へと移行する際にはいくつもの障壁があり、条件を満たさないと認可地縁団体へと移行できないことがわかった。それらの条件を明らかにすることは、入会権の権利としての性格を検討することにつながる。 研究の成果は、平成30年10月に行われた関東森林学会で報告し、論文投稿に向けた有意義なコメントを得ることができた。 一方で昨年度に引き続き、複数名の法学者が参加する森林所有権に関する研究会にも参加した。そこでは近年の法学分野からの入会権研究の動向を把握することに努め、また研究者との意見交換も行った。
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