本研究は、農業農村整備事業において排水路に施工された環境配慮施設である「魚溜工」と「環境配慮型合流桝」を対象として、①環境配慮工法の魚類保全効果を評価すること、②魚溜工と合流桝の退避場としての効果を検証すること、③効果的な環境配慮施設の形状を提示すること、を目的として研究を行った。 最も早く整備が完了した工区における6年間のモニタリングデータから、採用された二つの環境配慮工法(いずれも水深を確保)は、退避場、越冬場としてはある程度機能するが、繁殖場となる環境はほとんど形成されないことが分かった。また、排水河川も含めた水域ネットワークの中での位置づけについても、大規模な出水が起こった場合、排水河川に生息する個体も大部分が流失し、排水河川からの供給による個体数の回復はあまり見込めないことが分かった。よって、対象とした地区のように下流が汽水域となる最下流域の水田地帯においては、水路内に繁殖・退避・越冬可能な環境を整備することが必須であることが明らかとなった。 「魚溜工」と「環境配慮型合流桝」では、いずれも水深が30cm以上あるため土砂の堆積が一定程度見られたが、環境配慮型合流桝の場合は合流水路の流れによって土砂の堆積が抑制され、越冬期に水深が確保されることが分かった。また、魚溜工については、模型実験の結果から、下流端をスロープにすることで土砂の排出を促進できる可能性があること、スロープの形状については、魚溜工全体の施設長と、スロープ部分の長さとの比が3:1の場合が最も有効である可能性が示された。
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