昨年度の結果に基づき,本試験に適した衛生指標菌分析法の検証を進めた。本試験には分析時に試料のpHの影響を受けにくい条件とする必要があることから,手法については昨年と同様のメンブレンフィルター法とし,用いる培地と検出されるコロニーの評価法について検証を行った。 消化液中のふん便性大腸菌群の分析に関しては,昨年度用いたmFC培地上に検出されるコロニーについて,コバックインドール試薬および大腸菌群選択培地を用いて陽性および擬陽性の検証を行い,昨年度の試験結果の一部が過大評価であった可能性が高いことを明らかにした。また,大腸菌・大腸菌群の分析に関しては,昨年度用いた合成発色酵素基質培地のひとつであるクロモカルトコリフォーム寒天培地上に検出されるコロニーについて,グラム染色法を用いた顕微鏡観察と遺伝子解析による微生物同定を行い,その多くがグラム陽性の桿菌(芽胞菌)類であることを明らかにし,昨年度の試験結果の一部が過大評価であった可能性が高いことを明らかにした。 これらの検証に基づき,昨年度は定性的な評価のみにとどまった,炭酸ナトリウム添加が消化液中の衛生指標菌の動態および肥料成分濃度におよぼす影響についての検討を行った。その結果,消化液への炭酸トリウム添加量が16 g/kgのときは添加後数時間以内に,8 g/kgの時は添加後24時間以内に,4 g/kgでは4日以内に,ふん便性大腸菌群はUS-EPAで下水汚泥を農地還元する際の基準を満たすことを明らかにした。また,有蓋,室温(22℃),炭酸ナトリウム添加直後撹拌,5日間静置という本試験条件下で,試料中のアンモニア態窒素濃度は最も炭酸ナトリウム添加量の多い試料(16 g/kg)においても2割程度にとどめられることを明らかにした。
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