研究課題/領域番号 |
16K18779
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鈴木 哲仁 京都大学, 農学研究科, 助教 (00723115)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細菌検査 / 簡易抽出 / 多孔質高分子 / 金属メッシュセンサ |
研究実績の概要 |
食の安心・安全への関心が高まるのに伴い, 食品の細菌検査への需要がますます高まっている。通常の細菌検査では公定法として、多くは培地により数日間培養を要する。また公定法の他にも、DNAを増幅する方法や蛍光標識を添加して検出する方法等が開発され、高精度に定量することが可能になってきているものの、手間や熟練を要するという問題があるため、迅速かつ簡便な技術が切望されている。そこで本研究では、これまで手間や時間を要してきた「前処理」も含めた簡便化、迅速化を検証するとともに、報告者がこれまで携わってきた金属周期構造を用いた簡易センサと組み合わせ、細菌検査への実用可能性を明らかにすることを目指す。 前処理用のツールとして、高性能な分離・反応担体として知られるモノリス型ポリマーを用い、細菌の簡易抽出カラムの製作を目指す。研究の初年度であるH28年度では、まずモノリス型ポリマー充填カラムの作製法を検討するとともに、ポリマー骨格を化学修飾し、抗原抗体反応を介して目的の細菌を特異的に捕捉する機能の付与を行った。ピペットチップの中にポリマーを充填し、抗体修飾を行ったうえで、10^7 cell/mLを0.5 mL注入したところ、77.6 %の菌を捕集できた。さらに、ストリッピングバッファー(抗体の剥離剤)を用いることで50.5 %の菌を回収することに成功した。 また検出用ツールとして金属メッシュセンサの選定を行うため、電磁界解析を用いて最適な構造の検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の目標としていた、モノリス型ポリマーの作成方法ならびに充填方法の検討を行い、実際にカラムに安定して充填し、化学修飾が行えていることが確認できたことから、研究は概ね順調に進展していると言える。ただし、まだポリマーの作成条件の最適化が十分とは言えず、細菌の回収率が高くないことが課題であり、次年度に検証・改善を行う予定である。また検出用ツールとして用いる金属メッシュセンサについて、従来は電磁波の透過測定を行うことを前提としていたが、本研究の成果により反射測定でも検出が行える可能性が明らかとなりつつある。これにより、従来は必須であった乾燥過程を省くことができる可能性があり、ターゲットをより迅速・簡便に検出することに貢献できるものと期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に別個で検討してきた金属メッシュセンサと簡易抽出カラムを組み合わせ、実際に細菌の菌種判定ならびに定量の可能性を明らかにすることを目指す。そのために、まずは初年度の課題であった、ポリマー充填カラムによる細菌の回収率と特異性を向上させるため、ポリマー作成工程と化学修飾工程の最適化を検証する。また牛乳をモデル試料として用い、夾雑物混在下での抽出性能を評価する予定である。最後に簡易抽出カラムを用いて抽出した細菌を金属メッシュセンサで検出する流れで、検出可能性とその定量性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で大きな支出額が見込まれるのは、化学修飾用の試薬(抗体)と、金属メッシュの購入費である。当該年度では、他項目の検討を重点的に行ったことに加え、以前より所有していた物の在庫があった。特に抗体試薬は使用期限が定められており、使用する直前に入手することが望ましく、該当年度は購入量が少なく済んだため、支出額は予定よりも少なくなった。しかし、現在所有している試薬類は使用期限が近づいており、研究を継続するために新たに多く購入する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
上記試薬類や金属メッシュの購入のために使用する。特に抗体は、大腸菌を対象としたものの他に対照実験用に枯草菌を対象としたものも購入する予定であるため、支出が大きくなることを予定している。また、その他消耗品の購入や学会発表用旅費として使用予定である。
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