研究課題
若手研究(B)
食肉目のイヌ科,ネコ科,クマ科の野生動物の多くに「偽妊娠」という現象が存在すると推測されているが,この現象の生殖内分泌学的な側面や生態的な意義には不明な点が多い。本研究では,リカオンとシンリンオオカミにおいて,同施設内の複数雌の妊娠と偽妊娠が毎年同調し,社会生態に関係している可能性があること,ジャイアントパンダとホッキョクグマでは,糞中13,14-dihydro-15-keto-PGF2α代謝物を指標に,妊娠と偽妊娠を区別できる可能性があることなどが明らかになった。
動物保全繁殖学
犬・猫・クマ類の偽妊娠は,生理的にも生態的にも興味深い現象であるが,これらの種を含むイヌ科・ネコ科・クマ科の他の野生種では不明なものがほとんどである。例えば,オオカミなどのイヌ科は,家族集団を営むことから,偽妊娠個体は他の雌の産子をヘルパー的に授乳していると考えられている。しかし,単独性のネコ科とクマ科では,そのような生態的理由は成立しない。各グループ間で比較することにより,その意義に迫ることにつながる。このような生理・生態の解明は,希少種の生息域外保全のための飼育下繁殖の推進に貢献できる基盤情報となる。