研究課題
骨格筋細胞の筋線維型(遅筋・速筋・中間型筋)は食肉の質と深い繋がりがあるため、これを自在に制御出来れば食肉生産技術向上へ大きく貢献できる。筋線維型を決定する主な要因は、成熟した筋細胞を取り巻く運動神経支配による影響だと定義されている。しかし、筋成長・肥大・再生に重要な役割を担う筋幹細胞(衛星細胞)が、互いに融合して新たに形成する筋細胞(筋管)の筋線維型は、神経支配の影響を受ける前に衛星細胞からの分泌因子によって制御される「早期決定機構」が存在するという仮説を着想した。これまでに、遅筋から単離した衛星細胞から速筋よりも多量に分泌される多機能性細胞制御因子semaphorin 3A(Sema3A)が、筋管の遅筋化を誘導することを突き止めたが(本機能に関しては論文投稿中)、速筋化誘導因子に関しては全く不明であるため、本研究ではその候補因子の探索ならびに仮説の妥当性を検証する。平成28年度は、速筋化誘導因子候補の同定とその発現パターンの変化を調べた。その候補として、Sema3Aと同様に多機能性であるnetrin family(netrin-1, 3および4)に着目した。netrin familyは筋芽細胞にて発現することがすでに報告されていることに加えて、神経系においてnetrin familyはSema3Aとは正反対の生理機能を発揮することが報告されていることから、筋線維型の制御においてもSema3Aとは逆の速筋化誘導作用を有すると期待された。実際に、分化期の衛星細胞においてnetrin familyの発現が増加することや、速筋由来の衛星細胞では遅筋よりもnetrin familyの発現が高い傾向にあることを突き止めた。さらに、Sema3A発現を抑制した筋芽細胞株においてnetrinの発現が代替的に増加する現象が認められた。
3: やや遅れている
遅筋および速筋それぞれの衛星細胞におけるnetrin familyの発現パターンを突き止めたが、速筋化誘導機能の検証に至らなかったため。
筋芽細胞株を用いたnetrinノックダウンまたは過剰発現実験系を確立し、筋管における各筋線維型特異的マーカーの発現変化を調べることで、直接的に速筋化誘導作用の有無を検証する。さらに、遅筋および速筋に局在する衛星細胞のnetrin familyとその受容体の発現パターンをより詳細に比較するため、組織化学的手法を用いた検証を行う予定である。また、衛星細胞特異的にSema3Aをconditional knockoutしたマウスを用いて、Sema3A発現抑制時のnetrin familyの代替的な発現変化を生体レベルで調べ、Sema3A/netrin連関の有無を検証する予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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