研究課題
骨格筋細胞の筋線維型(遅筋および速筋)は、食肉の質と深い繋がりがあるため、これを自在に制御出来れば食肉生産技術向上へ大きく貢献できる。筋線維型を決定する主な要因は、成熟した筋細胞を取り巻く運動神経支配による影響だと広く定義されている。しかし、筋成長、肥大および再生の過程で重要な役割を担う筋幹細胞(衛星細胞)が、互いに融合して新たに形成する筋細胞(筋管)の筋線維型は、神経支配の影響を受ける前に衛星細胞からの分泌因子によって制御される「早期決定機構」が存在するという仮説を着想した。これまでに、遅筋から単離した衛星細胞において速筋よりも多量に分泌される多機能性細胞制御因子semaphorin 3A(Sema3A)が、筋管の遅筋化を誘導することを突き止めたが(Tatsumi et al. 2017. STEM CELLS; 鈴木貴弘 2018. 食肉の科学)、速筋化誘導因子に関しては全く不明である。そこで本研究では、候補因子として、筋芽細胞で発現しかつ神経系や骨系などにおいてSema3Aと拮抗した生理機能を発揮するNetrin familyに着目した。平成30年度は、前年度において速筋化誘導因子の有力な候補としてピックアップしたNetrin-1に着目した研究活動を展開した。衛星細胞由来の筋芽細胞が、融合して筋管を形成する過程において、RNA干渉法によりNetrin-1の発現を抑制した。その際、筋線維型のマーカーとなるミオシン重鎖(myosin heavy chain; MyHC)アイソフォームのうち、速筋型MyHCのタンパク質発現量が減少した。さらに、速筋型MyHCの中でも超速筋型としてカテゴライズされるMyHC IIb型が特異的に減少しており、Netrin-1は筋管の速筋化誘導に関与することが明らかとなった。なお、遅筋型MyHCの発現量の変化は認められなかった。
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