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2017 年度 実施状況報告書

新規ダニ媒介性フレボウイルスの探索とSFTSウイルスの病原性獲得メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 16K18791
研究機関北海道大学

研究代表者

松野 啓太  北海道大学, 獣医学研究院, 講師 (40753306)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードウイルス / ダニ媒介性 / 病原性
研究実績の概要

平成28年度と同じ調査地域に加え、新たな地域でマダニを採集し、フレボウイルスの積極的探索を行った。その結果、さらに複数種の新規フレボウイルス遺伝子をマダニから検出した。また、前年度までに発見されたMukawaウイルスおよびKuriyamaウイルスについて、宿主であると考えられるシュルツェマダニを重点的に採集し、ウイルス遺伝子を探索した。その結果、これらのウイルスが北海道の一部地域のシュルツェマダニに限局して分布している可能性を示す結果を得た。
これまでに検出された新規フレボウイルスのうち、培養細胞での分離ができなかったウイルスについては、ウイルスRNAを含むマダニtotal RNAをシークエンスし、ウイルスの全長遺伝子配列を得た。これらのウイルス遺伝子配列を既存のフレボウイルスと比較したところ、一部のフレボウイルスは非構造タンパク質であるNSsのORFを欠くことが明らかとなった。また、これらのNSs欠損フレボウイルスはM分節RNAも欠いていることを示唆する結果が得られ、NSs遺伝子およびM分節(膜タンパク質をコードしている)がダニ媒介性フレボウイルスの病原性規定因子である可能性が考えられた。
そこで、NSsについて、さまざまなダニ媒介性フレボウイルス間で機能を比較したところ、ヒトに病気を起こすことが報告されているウイルスではNSsの抗自然免疫作用、特にインターフェロン産生抑制作用が強いということが明らかとなった。しかし、インターフェロン産生抑制と、SFTSウイルスNSsとインターフェロン産生シグナル因子であるTBK1との結合は、さまざまな動物種由来のTBK1でも見られたことから、NSsだけでは動物種間の病原性の違いについては説明できないことが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究ではこれまでにダニ媒介性フレボウイルスについて、さらに幅広く探索を行い、複数の新規ウイルスを検出した。これらのウイルスの遺伝子全長配列の解明は、ダニ媒介性フレボウイルスの病原性規定因子を推定する上で重要な情報となった。したがって、本研究におけるダニ媒介性フレボウイルス探索は順調に進展しており、今後、さらに新規ウイルスが発見されることでより詳細な解析が可能となると考えられる。したがって、ウイルス探索については概ね順調に進展していると言える。
病原性規定因子の系統解析による推定については、マダニ中のNSs欠損ウイルスの発見により大きく進展した。NSs遺伝子欠損ウイルスはこれまでのところ、マダニ中からのみ遺伝子が検出されているのみで、哺乳動物から検出されたことはない。また、膜タンパク質遺伝子も欠損しているこれらのウイルスは感染性のウイルス粒子を産生することができないとも考えられるため、哺乳動物に感染する機会がないウイルスのみがNSsを欠損しているとも言える。
以上のことから、病原性規定因子候補である非構造タンパク質NSsについて、さらに詳細な比較解析を行った。その結果、インターフェロン産生抑制能にウイルス間で違いがあることが明らかとなった。NSsのインターフェロン産生抑制能とウイルスの各種動物における病原性を比較するために、様々な動物のTBK1をクローニングし、SFTSウイルスのNSsとの結合やシグナル抑制を調べたところ、いずれの動物のインターフェロン産生系もNSsのターゲットとなっていることが明らかとなった。以上の結果から、病原性規定因子探索についても、順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

引き続き新規ダニ媒介性フレボウイルスの探索を行う。調査地域としてシエラレオネ、ニューカレドニア、ボリビア等を予定している。これらは、これまでにダニ媒介性ウイルスの調査がほとんど行われていない地域であり、新規発見が期待される。
一部遺伝子を欠損したフレボウイルスについては、病原性を持たないウイルス(遺伝子)であると考えられる。これらのウイルスについては、遺伝子系統解析により、フレボウイルスが遺伝子を欠損したものか、あるいは遺伝子欠損ウイルスが外来遺伝子を獲得して感染性を獲得したものかを明らかにする。
同時に、SFTSウイルスのNSsに着目して、病原性の分子基盤解明に向けた研究を推進する。具体的には、リバースジェネティクス系の樹立あるいはタンパク質強制発現系を用いて、NSs変異体の挙動と宿主応答への影響を調べる。また、テキサス大学より導入したリフトバレー熱ウイルうのリバースジェネティクス系を生かし、SFTSウイルスとの違いについて解析する。最終的には、マウスモデルを用いた比較により病原性決定因子を確定する。

次年度使用額が生じた理由

病原性試験にて使用予定だったマウスの導入が検疫により遅れたため。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)

  • [国際共同研究] メイヨークリニック(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      メイヨークリニック
  • [国際共同研究] 南太平洋大学(フィジー)

    • 国名
      フィジー
    • 外国機関名
      南太平洋大学
  • [国際共同研究] ザンビア大学(ザンビア)

    • 国名
      ザンビア
    • 外国機関名
      ザンビア大学
  • [国際共同研究] ミャンマー獣医科大学(ミャンマー)

    • 国名
      ミャンマー
    • 外国機関名
      ミャンマー獣医科大学
  • [学会発表] ブニヤウイルスの遺伝的多様性から紐解く病原性2017

    • 著者名/発表者名
      松野 啓太
    • 学会等名
      ウイルス研究の潮流シリーズセミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] Genetic diversity among phleboviruses identified in ticks; implication of distinct evolutional pathways of phleboviruses2017

    • 著者名/発表者名
      Keita Matsuno, Masahiro Kajihara, Nodoka Kasajima, Ryo Nakao, Shiho Torii, Hiroshi Shimoda, Ken Maeda, Ayato Takada, Hideki Ebihara, Hirofumi Sawa
    • 学会等名
      第16回あわじしま感染症・免疫フォーラム
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 動物園におけるダニ媒介性ウイルス感染症によるチーターの死亡2017

    • 著者名/発表者名
      松野 啓太, 笠島 和, 野々上範之, 野田亜矢子, 南 心司, 宇根有美, 前田 健
    • 学会等名
      第63回日本寄生虫学会・日本衛生動物学会北日本支部合同大会
  • [学会発表] Discovery and characterization of novel tick-borne phleboviruses in ticks collected in Hokkaido2017

    • 著者名/発表者名
      Shiho Torii, Keita Matsuno, Masahiro Kajihara, Ryo Nakao, Naganori Nao, Yongjin Qiu, Manabu Igarashi, Akina Mori-Kajihara, Mieko Muramatsu, Kentaro Yoshii, Chihiro Sugimoto, Ayato Takada, Hirofumi Sawa, Hideki Ebihara
    • 学会等名
      第16回あわじしま感染症・免疫フォーラム
    • 国際学会
  • [学会発表] 2つの現場から:ダニ媒介性ウイルスの網羅的探索と鳥インフルエンザの診断2017

    • 著者名/発表者名
      松野啓太
    • 学会等名
      第6回生命医薬情報学連合大会
  • [学会発表] Discoveries of novel viruses in ticks and fruit bats by using FLDS method and MinION sequencer2017

    • 著者名/発表者名
      Keita Matsuno, Masahiro Kajihara, Syun-ichi Urayama, Ryo Nakao, Miho Hirai, Yongjin Qiu, Takuro Nunoura, Aaron S Mweene, Bernard M Hang'ombe, Martin Simuunza, Masatoshi Okamatsu, Yoshihiro Sakoda, Hirofumi Sawa, Ayato Takada
    • 学会等名
      第65回日本ウイルス学会学術集会
    • 国際学会
  • [学会発表] Suppression of PKR signaling pathway by nonstructural protein of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus.2017

    • 著者名/発表者名
      Kasajima N, Matsuno K, Torii S, Hiono T, Okamatsu M, Ebihara H, Sakoda Y
    • 学会等名
      第65回日本ウイルス学会学術集会
    • 国際学会

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-02-21  

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