研究課題
研究代表者が確立した代表的な動物トリパノソーマ病であるナガナ病(Trypanosoma congolense, T. brucei), スーラ病(T. evansi)及び媾疫(T. equiperdum)に対する薬剤スクリーニング系を用いて新規トリパノソーマ治療薬候補の選定とその作用機序解明に向けて研究を実施した。今年度は作用機序評価系の確立のために、薬剤クリーニング系で使用しているトリパノソーマからRNAを精製し、次世代シーケンサー解析に供した。現在トランスクリープトームデータを解析中である。さらに確立したスクリーニング系を用いてリファレンス化合物並びに様々な天然由来化合物の抗トリパノソーマ活性を解析した結果、海綿由来化合物や薬草由来化合物に抗トリパノソーマ活性を見出し、複数の論文として報告した。またリファレンス化合物選定の過程で、ドラックリポジショニングの観点から既存薬剤のトリパノソーマ治療薬への適応拡大を志向し、複数の抗生物質の抗トリパノソーマ作用を検証した。その結果、抗生物質の一種であるアジスロマイシンのin vitro及びin vivo(マウスモデル)における抗トリパノソーマ作用を論文として報告した。当該抗生物質は安価であり、すでにヒトの細菌感染症で使用されているため安全性も検証済みである。そのため、当該抗生物質の薬剤としての適用範囲を「トリパノソーマ病治療薬」へと拡大させる可能性が示唆された。
3: やや遅れている
主要な動物トリパノソーマ病の病原トリパノソーマに対する薬剤スクリーニング系が構築されたことにより、動物トリパノソーマ病に対する新規薬剤候補探索に必要な研究基盤が整備された。この研究基盤を用いて抗生物質や種々の天然由来化合物(海綿、薬草等)から新規抗トリパノソーマ化合物が見出され、今後の創薬への展開に期待がされる。一方、薬剤機序評価系に必要なトランスクリープトームデータの解析に時間がかかっているため、同評価系の確立には至らなかった。
各種動物トリパノソーマ病の病原トリパノソーマに対するトランスクリープトームデータを取得し解析することで、薬剤機序評価系の構築に向けて研究を進める。さらに有効な治療薬がないトリパノソーマ病に対し、多くの新規薬剤候補を提示するため、薬剤スクリーニング系を用いた新規抗トリパノソーマ化合物の探索及び有望な化合物についてはin vivo(マウスモデル)を用いた動物実験での検証も合わせて進める。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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