(1)卵形成に必須の卵黄タンパク質前駆体vitellogenin(Vg)合成ならびにヘモリンフ(体液)から卵巣へのVgの取り込みに関わる分子について、B. ovata感染雌ダニにおける遺伝子ならびにタンパク質の発現を解析した。昨年と同様にB. ovata感染雌ダニを作出し、産卵準備期の雌ダニを解剖し、脂肪体、卵巣、ヘモリンフを採取した。採取したサンプルから抽出したTotal RNAとタンパク質をReal-time PCR法およびWestern blotting法にそれぞれ供し、Vg合成ならびにVg取り込みに関わる分子の発現を解析した。その結果、B. ovata感染雌ダニでは、非感染雌ダニと比較し、各遺伝子の発現に着目すべき差は認められなかったが、脂肪体とヘモリンフ中にVgタンパク質が蓄積したことが判明した。昨年までに得た知見と総合すると、B. ovata感染時にはヘモリンフから卵巣へのVg取り込みが抑制され、その結果として脂肪体とヘモリンフにVgが蓄積すると推測された。次に、RNA干渉法によりB. ovata感染雌ダニのVg遺伝子発現を抑制したところ、卵巣における原虫検出率、ヘモリンフにおける原虫数が減少する傾向にあった。 (2)B. ovata感染卵母細胞の形態学的解析を実施するうえで、リファレンスとなるB. ovata非感染雌ダニの卵母細胞発育過程について把握する必要がある。そこで、フタトゲチマダニ雌ダニについて、未吸血から産卵期における卵巣および卵母細胞の発育を組織学的に観察し、発育ステージをⅠ~Ⅴに分類する基準を設定した。 (3)タイレリアTheileria orientalis感染フタトゲチマダニの作出法を確立し、感染マダニの飢餓時におけるオートファジー関連遺伝子発現解析ならびに形態学的解析のためのサンプルを回収した。
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