平成28年度は正常な犬を用いて、心エコー図検査の右心機能指標の再現性評価ならびに正常値の設定を行った。再現性の評価は実験動物として飼育している正常なビーグル犬6頭を用いて、変動係数、ICCを算出した。その結果、本研究の主なターゲットである右室strainを含む主要な右室機能指標は犬においても良好な再現性を有する指標であることが明らかとなった。正常値の設定には、本学附属動物病院に来院した症例犬のうち、麻酔前検査として心エコー図検査を実施した犬117頭を用いた。当初は体格による差異が少ないと思われていたstrainも体格と正の相関を示すことが明らかとなった。これらの知見は今後肺高血圧の臨床例で実施してゆく上で貴重な情報である。ここまでの結果をまとめ、現在Journal of Veterinary Cardiologyに投稿し、査読を受けている最中である。現在major revisionという評価を受けているが、今年度中にacceptされると見込んでいる。 また、肺動脈収縮薬であるU46619を用いた薬剤誘発性肺高血圧症モデル犬の作成も行い、現在心エコー図検査ならびに心臓カテーテル検査を実施し、データを解析している最中である。現在までの所、数ある心エコー図検査の右心機能指標の中で、右室strainが最も高い精度で肺動脈圧、肺血管抵抗、心拍出量、といった心臓カテーテル検査での血行動態指標を予測し得る結果が得られており、概ね順調に研究を遂行することが出来ている。
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