研究課題/領域番号 |
16K18801
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
五十嵐 寛高 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (20758172)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 / 制御性T細胞 / プロバイオティクス / 抗菌薬 |
研究実績の概要 |
今年度は炎症性結直腸ポリープ(ICRP)に罹患したミニチュア・ダックスフンド(MD)症例犬における糞便中の短鎖脂肪酸(SCFA)濃度およびSCFA産生菌量を対照MDと比較し、さらにSCFA濃度とSCFA産生菌量との相関を検討した。 過去4週間で抗菌薬を投与されていないICRP症例MD 11頭および消化器疾患のない対照MD25頭より糞便を採取し、糞便中のSCFA濃度を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。さらに糞便よりDNAを抽出し、リアルタイムPCRによりSCFA産生菌(Firmicutes、Bifidobacterium、Lactobacillus、Faecalibacterium、Enterococcus、Ruminococcaceae、Blautia)を定量した。 その結果、ICRP症例犬は対照犬に比べて糞便中の総SCFA濃度が減少する傾向にあり、特にプロピオン酸の有意な減少が認められた。また、ICRP症例犬では対照犬に比べてBifidobacteriumの有意な減少が認められたが、他の菌種については有意差が認められなかった。糞便中の総SCFA濃度とFirmicutes、BifidobacteriumおよびLactobacillus量との間に有意な正の相関が認められ、またFirmicutes量とプロピオン酸濃度との間に有意な正の相関が認められた。 以上の結果より、ICRP症例犬では糞便中SCFA濃度が減少しており、腸内細菌叢の変動が関連していることが示唆された。SCFAは結腸粘膜における制御性T細胞の分化誘導能を有することが報告されているため、今回認められたプロピオン酸の減少がICRPの病態に関与していることが示唆された。今後は、犬におけるSCFAと制御性T細胞との関連性、およびICRP病変部における制御性T細胞の動態について検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ICRP症例犬における糞便中短鎖脂肪酸の解析はほぼ完了している。また、制御性T細胞の動態解析についても条件検討はすでに終了しており、検体も一定数は既に収集しているため、症例犬を用いた実験1は順調に進行していると考えている。 一方で、実験2(食事などによる腸内細菌叢や短鎖脂肪酸、および制御性T細胞への影響の検討)については、研究に組入れ可能な実験犬の手配に時間がかかったことにより、現時点で実験は開始しているもののまだデータが得られていない状況である。 そのため、全体としては(3)やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はICRP症例犬における腸内細菌叢の変動と短鎖脂肪酸減少との関連性を解明することができた。次年度は条件検討の終えている制御性T細胞の動態解析を進め、ICRPの病態解析を進めていく予定である。 また、実験2を進めることで、食事などによる腸内細菌叢や短鎖脂肪酸、および制御性T細胞の動態を解析することで、犬におけるプレバイオティクスの消化器疾患に対する臨床的意義を明らかにしたいと考えている。 その後、効果が確認次第ICRP症例犬を用いた臨床試験(実験3)を平成30年度にかけて開始していくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験2(食事などによる腸内細菌叢や短鎖脂肪酸、および制御性T細胞への影響の検討)について、研究に組入れ可能な実験犬の手配に時間がかかったことにより、現時点で実験は開始しているものの採材や糞便成分の解析が開始されていないことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
実験2で採材された血液や糞便成分の解析を開始する際に、その消耗品や検査代に使用していく予定である。
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