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2016 年度 実施状況報告書

ウシ初期黄体のPG抵抗性と低酸素環境の関係-初期黄体におけるBNIP3の役割-

研究課題

研究課題/領域番号 16K18803
研究機関鳥取大学

研究代表者

西村 亮  鳥取大学, 農学部, 助教 (20704901)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード牛 / 初期黄体 / 低酸素環境 / PG抵抗性 / GLUT1 / HIF1
研究実績の概要

平成28年度の本研究課題における実施状況は以下の通り:
【概要】牛の黄体形成において、VEGF (血管内皮増殖因子)、BNIP3 (BCL2/adenovirus E1B 19 kDa protein-interacting protein3) に次ぐ重要な因子を特定するために、発情周期各期の黄体組織および初代培養黄体細胞を用いた検討を実施した。特に低酸素環境およびhypoxia-inducible factor-1 (HIF1) によって誘導される糖輸送担体 glucose transporter-1 (GLUT1) の初期黄体における機能が不明であることから、GLUT1 の黄体形成における役割について検討した。
【方法】発情周期各期の牛黄体組織の GLUT1 mRNA 発現について定量的 RT-PCR により調べた。牛の初期・中期黄体細胞を単離培養し、グルコース (0.25-250 μM) および GLUT1 阻害剤 (Cytochalasin B; 10 μM, STF-31; 10 μM) の P4 分泌に及ぼす影響について enzyme immunoassay により調べた。初期黄体細胞において、低酸素環境が GLUT1 mRNA 発現に及ぼす影響について定量的 RT-PCR により調べた。
【結果】GLUT1 mRNA 発現は初期黄体において顕著に高かった。グルコースは初期黄体においてのみ P4 分泌を増加させた。GLUT1 の阻害は両細胞において P4 分泌を低下させた。低酸素環境は初期黄体細胞における GLUT1 mRNA 発現を増加させた。
【結論】牛の初期黄体において、低酸素環境が血管新生、細胞生存に加え、黄体細胞の GLUT1 発現を増加させて糖輸送を支持して P4 分泌を促すことで黄体形成に関与する可能性が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

効率よく牛黄体形成に関与する新しい因子 (GLUT1) を見出すことができたため、上記区分とした。具体的には次のとおりである:
当初計画では、PCR array を用いた新しい因子の抽出を実施予定であったが、その実施前の予備検討として考えられる遺伝子の検討を実施した。低酸素環境が HIF1 を介して発現誘導する遺伝子は、血管新生、赤血球増産、解糖系、アポトーシス、オートファジーなど多岐にわたるが、その中で解糖系に関わる糖輸送担体 (GLUT1) の遺伝子発現も HIF1 の制御下にあることが知られている。しかし、牛の初期黄体においてはその機能が知られていなかったことから、まずこの点について検討を実施したところ初期黄体における GLUT1 mRNA 発現の亢進を見出した。さらに解析を進めるため、初代培養細胞を用いて検討したところ、初期黄体細胞における P4 分泌への関与が明らかとなった。低酸素環境に反応して GLUT1 mRNA 発現の上昇することも確認できた。以上の成果を認めたことから、進捗状況を上記区分とした。

今後の研究の推進方策

当初より計画していたオートファジーに関連した蛋白質 (BNIP3)、血管新生に関連した蛋白質 (VEGF) に加え、平成 28 年度に新たに見出した糖輸送に関連した蛋白質 (GLUT1) についてノックアウト法を確立し、予定通り黄体細胞の生存性、アポトーシス、P4 合成の評価に適用する。具体的には次のとおりである:
初期と中期の黄体細胞を単離・培養し、BNIP3、VEGF および GLUT1 を CRISPR/Cas9 を用いてノックアウトし、細胞の生存性 (WST-1 assay, Trypan blue 染色、乳酸脱水素酵素法)、アポトーシス (TUNEL染色, アポトーシス実行因子 caspase-3 活性の測定, アポトーシス関連因子の mRNA・タンパク質発現解析 [定量的 PCR, Western blot])、P4 合成 (EIA, ステロイド合成系の mRNA・タンパク質発現解析 [定量的 PCR, Western blot]) について評価する。この解析により、BNIP3、VEGF および GLUT1 の初期と中期での黄体細胞における重要性の違いが判明する。

次年度使用額が生じた理由

実施状況報告のとおり、当初計画よりも効率よく予備的検討結果を展開することで研究成果を上げることができたことから、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

平成29年度には、平成28年度に効率よく成果を上げた分、さらに研究を展開する必要があり、そのために使用する予定である。具体的には、平成28年度に見出した成果について、定量的 RT-PCR による mRNA 発現解析およびウエスタンブロッティングによる蛋白質発現解析を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Hypoxia- inducible factor 1 mediates hypoxia-enhanced synthesis of progesterone during luteinization of granulosa cells.2017

    • 著者名/発表者名
      Fadhillah, Yoshioka S, Nishimura R, Yamamoto Y, Kimura K, Okuda K.
    • 雑誌名

      Journal of Reproduction and Development

      巻: 63 ページ: 75-85

    • DOI

      10.1262/jrd.2016-068.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ウシ初期および中期黄体細胞のプロジェステロン (P4) 分泌に及ぼす低酸素環境の影響2017

    • 著者名/発表者名
      長谷川啓喜・西村 亮・菱沼 貢・山下真路・伊藤典彦・岡本芳晴・窪 友瑛・伊賀浩輔・木村康二・奥田 潔
    • 学会等名
      日本畜産学会第122回大会
    • 発表場所
      兵庫県神戸市神戸大学鶴甲第1キャンパス
    • 年月日
      2017-03-29 – 2017-03-29
  • [学会発表] ウシ黄体の消長と酸素濃度の関係2017

    • 著者名/発表者名
      西村 亮
    • 学会等名
      岡山県農業共済組合連合会平成28年度家畜診療技術者講習会
    • 発表場所
      岡山県岡山市岡山県農業共済会館
    • 年月日
      2017-03-07 – 2017-03-07
    • 招待講演
  • [学会発表] 黄体の消長と低酸素環境2017

    • 著者名/発表者名
      西村 亮
    • 学会等名
      北海道受精卵移殖研究会シンポジウム
    • 発表場所
      北海道札幌市北海道大学
    • 年月日
      2017-02-15 – 2017-02-15
    • 招待講演
  • [図書] The Life Cycle Of The Corpus Luteum2016

    • 著者名/発表者名
      Okuda K, Nishimura R (Meidan R. eds.)
    • 総ページ数
      283
    • 出版者
      Springer press

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公開日: 2018-01-16  

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