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2018 年度 実施状況報告書

ウシ初期黄体のPG抵抗性と低酸素環境の関係-初期黄体におけるBNIP3の役割-

研究課題

研究課題/領域番号 16K18803
研究機関鳥取大学

研究代表者

西村 亮  鳥取大学, 農学部, 助教 (20704901)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワードGLUT1 / glucose / 黄体退行 / アポトーシス
研究実績の概要

平成 30 年度の本研究課題における実施状況は以下の通り:
【概要】牛の黄体形成において、VEGF (血管内皮増殖因子)、BNIP3 (BCL2/adenovirus E1B 19 kDa protein-interacting protein3) に次ぐ重要な因子を特定するための検討を継続して実施した。特に、平成28年度に黄体形成における関与を見出した糖輸送担体 glucose transporter-1 (GLUT1) およびこれにより輸送される glucose の黄体機能における役割について検討した。
【方法】牛の中期黄体細胞を glucose 添加あるいは無添加培地において一定時間培養し、細胞生存率を調べるとともにアポトーシスに関連するタンパク質 (FAS, CASP8, BCL2, BAX, CASP3) の mRNA 発現について定量的 RT-PCR により調べた。glucose 添加培地の牛中期黄体細胞に GLUT1 阻害剤を添加して一定時間培養した後、細胞生存率を調べた。
【結果】glucose を除去あるいは GLUT1 を阻害することで、glucose を添加した無処理区と比較して細胞生存率が有意に低下した。glucose の除去により CASP3 および FAS の mRNA 発現量が増加し、さらに glucose (25 mM) を追加することで glucose を含む培地の細胞における発現量と差のない発現量となった。
【結論】GLUT1 がウシ初期黄体において機能する一方で、GLUT1 を介して黄体細胞に供給される glucose が低下することで黄体細胞のアポトーシスすなわち黄体の構造的退行が誘導されることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度では、牛黄体形成に関与する因子を見出すことができなかったものの、継続して研究した結果、想定外ではあるものの黄体退行機構の一端を明らかにすることができたため、上記区分とした。具体的には次のとおりである:
当初計画では、PCR array を用いた新しい黄体形成因子の抽出を実施予定であったが、平成 28 年度に黄体形成に関与することを見出した GLUT1 について、その牛黄体機能における役割を追求した。中期培養細胞において、GLUT1 を阻害あるいは glucose を除去して培養を継続したところ細胞生存率が低下し、さらに定量的 RT-PCR によって細胞死がアポトーシスによるものであることが明らかとなった。アポトーシスは黄体退行の一つの指標であること、さらに黄体退行時には卵巣に至る血流量の低下することから、血流の低下によって黄体に供給される glucose の減少することが黄体の退行に関わることが明らかとなった。以上の成果を認め、次年度さらに詳細に解析する課題を見いだせたことから、進捗状況を上記区分とした。

今後の研究の推進方策

当初より計画していたオートファジーに関連した蛋白質 (BNIP3)、血管新生に関連した蛋白質 (VEGF) に加え、平成 28-30 年度に新たに見出した GLUT1, endoglin, betaglycan についてノックアウト法を確立し、予定通り黄体細胞の生存性、アポトーシス、P4 合成の評価に適用する。具体的には次のとおりである:
初期と中期の黄体細胞を単離・培養し、BNIP3, VEGF, GLUT1 endoglin, betaglycan を CRISPR/Cas9 を用いてノックアウトし、細胞の生存性 (WST-1 assay, Trypan blue 染色、乳酸脱水素酵素法)、アポトーシス (TUNEL染色, アポトーシス実行因子 caspase-3 活性の測定, アポトーシス関連因子の mRNA・タンパク質発現解析 [定量的 PCR, Western blot])、P4 合成 (EIA, ステロイド合成系の mRNA・タンパク質発現解析 [定量的 PCR, Western blot]) について評価する。この解析により、BNIP3, VEGF, GLUT1 endoglin, betaglycan の初期と中期での黄体細胞における重要性の違いが判明する。

次年度使用額が生じた理由

【理由】 実施状況報告のとおり、当初計画よりも効率よく予備的検討結果を展開することで研究成果を上げることができたことから、次年度使用額が生じた。
【使用計画】 平成 31 年度には、平成 30 年度に効率よく成果を上げた分、さらに研究を展開する必要があり、そのために使用する。具体的には、平成 30 年度に見出した成果について、定量的 RT-PCR による mRNA 発現解析およびウエスタンブロッティングによる蛋白質発現解析を予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Effect of hypoxia on progesterone production by cultured bovine early and mid luteal cells.2019

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa H, Nishimura R, Yamashita M, Yamaguchi T, Hishinuma M, Okuda K.
    • 雑誌名

      Journal of Reproduction and Development

      巻: 65 ページ: 67-72

    • DOI

      10.1262/jrd.2018-061.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ウシ黄体における骨形成蛋白質結合蛋白質の役割.2018

    • 著者名/発表者名
      西村 亮,長谷川啓喜,山下真路,伊藤典彦,岡本芳晴,木村康二,菱沼 貢,奥田 潔
    • 学会等名
      第 161 回日本獣医学会

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公開日: 2019-12-27  

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