研究課題/領域番号 |
16K18808
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
手嶋 隆洋 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (80610708)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脂肪由来幹細胞 / 肝細胞癌 / 肝星細胞 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肝細胞癌の新たな治療ツールとして脂肪由来幹細胞が有用であるのかを検討することである。そのために、肝星細胞を中心とする腫瘍微小環境に対して犬の脂肪由来幹細胞が与える効果を検討している。 本年度は、犬の脂肪由来幹細胞が肝星細胞に与える効果と肝細胞癌細胞に与える効果を次の点から検討した。①肝星細胞の増殖に与える効果について:健常な犬の肝臓より分離培養した肝星細胞を用いて、脂肪由来幹細胞の培養上清と共培養することで、増殖能の変化をMTT assayにより検討した。その結果、培養上清を含んだ条件では、肝星細胞の増殖能に増加が認められた。②肝星細胞に発現するマトリックスプロテアーゼ(MMP)の変化について:腫瘍の微小環境構築に重要や役割をはたすMMP2とMMP9については、脂肪由来幹細胞の影響によって、ともに発現量の増加が認められた。③肝細胞癌細胞に与える効果について:犬の肝細胞癌のcell lineを用いて、脂肪由来幹細胞との共培養下における、増殖能、浸潤能、および様々な成長因子の発現量の変化について検討を行った。その結果、肝細胞癌の増殖能および浸潤能については、脂肪由来幹細胞の培養上清を30%含んだ条件において、最も増加が認められた。また、肝細胞癌細胞に発現する成長因子の多くに発現量の増加が認められた。 犬の肝細胞癌細胞に与える影響については、すでに学術雑誌へ投稿中であり、肝星細胞へ与える直接的な効果についても、現在結果をまとめている段階であり、次年度に補足的な実験を追加したうえで海外誌へ投稿する予定である。 次年度は犬の脂肪由来幹細胞が肝細胞癌の腫瘍微小環境に与える影響について、さらに多面的に検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、本年度に肝星細胞からのサイトカイン産生能の変化について検討する予定であった。本年度は測定を実施していないが、サイトカイン産生能を検討するためのサンプルはすでに揃っているため、当初の研究計画から大きな遅れはないものと考えている。 本年度で、肝細胞癌に与える影響については終了したことから、次年度は腫瘍微小環境の構築に関連している因子に与える影響を中心に研究を実施できる状況である。また、現時点では、研究の進行を妨げるような予期しないトラブルや大きな問題は発生しておらず、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画としては、脂肪由来幹細胞が犬の肝細胞癌における腫瘍微小環境について与える影響について、さらに検討を進める予定である。そのため、腫瘍微小環境を構築する次の因子に与える影響を中心に研究を行う予定としている。 ①血管内皮細胞の血管形成能に与える影響 ②マクロファージに与える影響 ③免疫担当細胞の発現に与える影響 ①~③の検討を行うにあたり、①は犬の肺組織、②③は末梢血単核細胞から分離したものを利用する予定である。犬の脂肪由来幹細胞が腫瘍微小環境の構築に重要や影響を与えるそれぞれの因子にどのような効果を与えるかについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究計画が順調に進行したため、本年度未使用額がわずかに発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度未使用額については、昨年度の研究計画において終了していない実験項目を実施するための費用として使用する予定である。
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