最終年度は、伝染性ファブリキウス嚢病(IBD)ウイルスのVP2遺伝子全長を組込んだ遺伝子組換えToxoplasma gondiiを用いて、原虫の発現するウイルスの蛋白質が鶏に免疫を賦与するか確認した。遺伝子組換え原虫で免疫した鶏にIBDウイルスを感染させ、ウイルスに対する抗体産生を観察したところ、非免疫群に比較して遺伝子組換え原虫で免疫した群の方が抗体を産生し始めるまでに多くの日数がかかった。このことから、原虫の発現するウイルス蛋白質に対して、鶏は細胞性免疫に偏って誘導されていることが示唆された。 本研究課題において、最も困難であることが予想された点は、Eimeria tenellaについて培養細胞を用いた継代手法が確立されておらず、連続的な遺伝子組換え手法の条件検討ができない点にあった。我々は、E. tenellaと近縁であり、培養細胞を用いて継代が可能なToxoplasma gondiiを用いて遺伝子組換えの条件検討を行い、その情報を元にE. tenellaに遺伝子組換え処理を実施したところ、外来遺伝子が導入されたE. tenellaを得ることに成功した。具体的には、E. tenella早熟化株のオーシストからスポロゾイトを取り出し、外来遺伝子を組み込んだプラスミドをヌクレオポレーションした。これらのスポロゾイトを雛の盲腸内に外科的に接種し、排出されたオーシストから、外来遺伝子を確認する手法を確立した。また、これらのオーシストからスポロゾイトを取り出し、MDBK細胞に接種することによって遺伝子組換え体を間接蛍光抗体法で確認する手法の確立にも成功した。
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