研究課題
肉牛の生産現場では、肥育期間を短縮する早期肥育技術の実用化に向け哺乳期間に代用乳を通常の倍以上給与する強化哺乳が検討され始めている。哺乳期間の栄養環境が屠畜時の肉質や産肉量を向上するこれまでの知見から、哺乳期間に成長因子や糖・脂質代謝関連遺伝子がエピジェネティクス制御を受けることが強く示唆されるが明らかとなっていない。そこで本研究では筋形成や脂質代謝に関与しているインスリン様成長因子-1(IGF-1)と糖・脂質代謝関連因子に焦点を当て、これらの因子がエピジェネティクス制御機構を受けるかを明らかにする。黒毛和牛雌仔牛に強化哺乳を行い、育成している。代用乳は強化哺乳区では市販代用乳を最大1200g/日給与し、対照区では500g/日の給与を行った。採血は3か月齢時、4か月齢および9か月齢に行った。筋肉の採材は4か月齢および9か月齢に行っている。肝臓の採材は9か月齢時に行っている。体重、体高の測定は採血時に行った。強化哺乳を行った子牛は、離乳時に成長が優れる傾向にあった。代用乳の摂取量は強化哺乳区では対照区と比較し優位に増加していた。スターターの摂取量は強化哺乳を行った子牛は対照区と比較し、少ない傾向にあった。育成期以降の飼料摂取量は両区の間で大きな差はなかった。しかしながら、強化哺乳を行った子牛では9か月齢時においても体格に優れる傾向にあり、強化哺乳は離乳後の増体にも影響する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在、試験に供試している牛は種付けに向け育成中である。育成期の採材は9か月齢時までを予定しているが、供試牛すべてが9か月齢に達していないので血液成分の解析や遺伝子発現の解析は行えていないが、ヒストン脱アセチル化酵素活性に必要な核抽出は終えている。また、採血や採材は予定通り行えているのでおおおむね順調に進展していると考えられる。
強化哺乳を行った子牛のを分娩まで育成し、育成期の全サンプルを揃える。その後、血液成分、糖・脂質代謝関連遺伝子発現を解析するとともに、エピジェネティクス制御との関連を調査するためヒストン脱アセチル化酵素活性を測定する。また、強化哺乳を行った牛に種付けを行い、出産した子牛の血液成分や遺伝子発現解析を行う。次に、βヒドロキシ酪酸濃度を上昇させる酪酸を代用乳に添加しβヒドロキシ酪酸とエピジェネティクス制御との関係を明らかにする。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Veterinary Science & Technology
巻: 8 ページ: 409
10.4172/2157-7579.1000409
Animal Science Journal
巻: 87 ページ: 1130-1136
10.1111/asj.12547