初期成長期の栄養環境によるエピジェネティクス制御はヒストンアセチル化の他にDNAメチル化が標的遺伝子のプロモーター領域に作用することで成獣の体質が制御される。エピジェネティクス制御による遺伝子発現はヒストン脱アセチル化とDNAメチル化の協調により抑制される そこで、出生3日より強化哺乳(1800g/日)を90日間行い、4および9月齢時に筋組織片をバイオプシーにより採取し、ヒストン脱アセチル化酵素活性を測定キットを用いて行った。また、採血は3、4および9か月齢時に行い、血漿インスリン濃度は時間分解免疫測定法を用いて解析し、血漿中βヒドロキシ酪酸およびNEFA濃度は市販測定キットを用いて測定した。次に、哺乳期間に血中βヒドロキシ酪酸濃度を上昇させる酪酸を添加し、ヒストン脱アセチル化酵素活性に及ぼすβヒドロキシ酪酸の影響を検討した。血液および組織(肝臓・胸最長筋)サンプルは2カ月齢時に採取しヒストン脱アセチル化酵素活性は市販測定キットを用いて解析した。また、血漿インスリン濃度は時間分解免疫測定法を用いて解析し、血漿中βヒドロキシ酪酸およびNEFA濃度は市販測定キットを用いて測定した。90日間の代用乳給により、筋中のヒストン脱アセチル化酵素活性は低い値を示した。一方で、血漿中βヒドロキシ酪酸濃度は高い値で推移した。血漿インスリンおよびNEFA濃度は両区の間で差は見られなかった。 酪酸給与試験では、酪酸給与によりヒストン脱アセチル酵素活性は高い値を示した。一方で、血漿中βヒドロキシ酪酸濃度は有意に低下した。本試験の結果より、黒毛和牛においてヒストン脱アセチル化酵素活性は、βヒドロキシ酪酸と密接に関連している可能性が示唆された。また、黒毛和牛において、哺乳期間中の酪酸給与はβヒドロキシ酪酸濃度を抑制することが示唆された。
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