エピジェネティクス制御は胎児期や初期成長期の栄養環境により調節を受け細胞分裂後も継承される。しかしながら、黒毛和牛のエピジェネティクス制御機構についてはほとんど知見は得られていないのが現状である。そこで、哺乳期間のエピジェネティクス制御機構を明らかにするとともに、哺乳期に獲得した形質が次世代へ受け継がれるかを検討した。 「母牛が仔牛期に獲得した形質が次世代へ受け継ぐか」を確認するため、平成28年度で供試した母牛から生まれた新生仔牛を用い、分娩後90日間通常哺乳後、9ヵ月齢時まで試験を行った。経時的に体重測定を行い、肝臓中および骨格筋中のヒストン脱アセチル化酵素活性を行った。仔牛の体重は、強化哺乳された母牛から産まれた仔牛は代用乳摂取量が同等だったにも関わらず、通常哺乳された母牛から産まれた仔牛よりも増加した。母牛のヒストン脱アセチル化酵素活性は、強化哺乳区で減少した。一方で、強化哺乳された母牛から産まれた仔牛のヒストン脱アセチル化酵素活性は促進されていた。遺伝子発現は遺伝子の塩基配列によるもの以外にヒストンアセチル化あるいはDNAメチル化によって後付けの修飾が起こり遺伝子発現が調節されることが示唆されているが、本試験ではどの因子がチ調節を受けているか特定は出来なかった。今後はマイクロアレイ解析等を行い、体重増加に寄与する因子、また、母牛から受け継ぐ因子を特定する。
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