研究課題
平成28年度では、ブタから採取した成熟脂肪細胞を天井培養し、脱分化過程で観察される細胞形態の変化とアクチン細胞骨格の局在および配向との関連性を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、脱分化過程における成熟脂肪細胞の形態変化を経時的に観察するため、異なる形状の培養容器について検討した。食肉センターで採取した6-7ヶ月齢のブタ皮下組織を細切したのち、コラゲナーゼ処理、フィルトレーションおよび低速遠心分離によって成熟脂肪細胞の画分を採取した。1、25ml 培養フラスコ、2、4ml スライドチャンバー、3、35mm ガラスボトムディッシュと25mm カバースリップを組み合わせて作製した培養容器(CD-CS)に単離した成熟脂肪細胞を播種し、20%FBS-DMEMで7日間培養した。培養後に顕微鏡観察した結果、いずれの培養容器においても成熟脂肪細胞の脱分化が認められた。ついで、培養7日間の成熟脂肪細胞を連続的に撮影するため、細胞培養装置が内蔵された倒立顕微鏡の設定条件について検討した。培養容器は、細胞培養装置に設置可能であることからCD-SCを選択した。CD-SCのカバースリップは細胞培養装置によって温められる培養液の対流あるいは蒸発によって僅かに移動してしまうため、培養期間中に焦点がずれてしまう問題があった。そこで、レンズとカバースリップとの距離を3μm間隔で15点設定することによって、焦点深度を維持しながら撮影が可能となった。アクチン細胞骨格の局在および配向は、生細胞においてアクチンに結合する赤色蛍光物質(SiR-Actin)を使用して撮影が可能かどうか検討した。その結果、培養1日後の成熟脂肪細胞の表層においてアクチンファイバーの形成が観察された。しかし、SiR-Actinを添加した成熟脂肪細胞は培養期間を通して球状の細胞形態が維持され、脱分化は認められなかった。
3: やや遅れている
平成28年度では、ブタから採取した成熟脂肪細胞を天井培養し、脱分化過程で観察される細胞形態の変化とアクチン細胞骨格の局在および配向との関連性を明らかにすることを目的として研究を行った。成熟脂肪細胞は、35mm ガラスボトムディッシュと25mm カバースリップを組み合わせて作製した培養容器(CD-CS)を用いることによって、細胞形態の変化を経時的に観察することが可能となった。しかし、アクチン細胞骨格を可視化するために培養液中に添加したSiR-Actinには成熟脂肪細胞の形態変化を阻害する効果が認められた。そのため、成熟脂肪細胞の形態変化に伴うアクチン細胞骨格の変化を観察することができていない。脱分化過程における成熟脂肪細胞の形態変化とアクチン細胞骨格の局在および配向の変化を同時に観察する実験方法の確立がやや遅れている。SiR-Actinはアクチンの脱重合を阻害するジャスプラキノライドから合成されているため、成熟脂肪細胞のアクチンの脱重合を阻害したことが原因であると考えられる。平成28年度の実験で使用したSiR-Actinの濃度(1μM)は、アクチン細胞骨格を可視化するに十分な蛍光強度があり、低濃度の条件を検討することが可能である。現在、成熟脂肪細胞の形態変化に影響を与えないSiR-Actinの濃度について検討中である。
ブタ成熟脂肪細胞の脱分化過程における細胞形態およびアクチン細胞骨格の変化を経時的に観察する培養容器および顕微鏡の設定条件は決定した。さらに、アクチン細胞骨格を可視化するSiR-Actin濃度を決定した後、成熟脂肪細胞の細胞形態およびアクチン細胞骨格を同一の細胞で経時的に観察し、細胞形態の変化とアクチン細胞骨格の配向との関連性について調べる予定である。また、脱分化過程で著しく変化する成熟脂肪細胞の様々な形態(一つの大きな脂肪滴を細胞質にもった単胞性脂肪細胞、脂肪滴が分割して大小様々な大きさの複数の脂肪滴をもつ多胞性脂肪細胞、線維芽細胞様の形態で細胞質に微小な脂肪滴をもつ線維芽細胞様脂肪細胞、細胞質に脂肪滴をもたず線維芽細胞様の形態を示す細胞)を呈した細胞を連続勾配密度遠心分離法によって分取し、全RNAを抽出したのち、GeneChipで遺伝子発現状況を網羅的に調べることによって形態変化とリプログラミングの関連性を調べる予定である。
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Journal of Oral Science
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