ハマダラカ防除に向けた吸血・消化に関わる遺伝子の解明と制御

2019 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 16K18824
• 研究機関: 自治医科大学
• 研究代表者: 山本 大介 自治医科大学, 医学部, 講師 (90597189)
• 研究期間 (年度): 2016-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 吸血 / 発生・分化 / ゲノム編集 / 害虫防除 / ベクターバイオロジー / 昆虫 / 性分化

研究実績の概要

昨年度のトランスクリプトーム解析で明らかになった、dsxF-KOヘテロ接合個体の雌（以下、dsxF-KO雌）の吸血後24時間の中腸において発現が顕著に減少している遺伝子のうち、アミノペプチダーゼN様遺伝子（APNL）とグルタミン合成酵素遺伝子について継時的なqRT-PCR解析を行い、野生型雌に比べてdsxF-KO雌では吸血後24時間から96時間に至るまで発現が低いことが明らかになった。ハマダラカにおいてdsxFが直接的あるいは間接的に吸血後の中腸でAPNLの発現に関与していることが示唆された。
ハマダラカ（Anopheles stephensi）におけるCRIPSR/Cas9系を導入するため、眼の色素遺伝子（kmo）と体色遺伝子（yellow）についてノックアウトを行い、それぞれゲノムDNAへの変異の導入（ノックアウト）に成功した。
上記で確立した技術を用いて、APNL遺伝子についてノックアウト系統の作製を試みたところ、遺伝子ORF中に塩基の欠損を起こした変異系統の樹立に成功した。この系統では変異によって標的遺伝子のアミノ酸の読み枠にフレームシフトが起こることから、タンパク質の機能が破壊されていると推測された。この変異系統（以下、APNL-KO系統）のKOホモの雌個体をマウスに吸血させたところ、吸血4日後には野生型と同様に中腸での血液の残存は見られなかった。しかしながら、KOホモ個体では吸血後の卵巣において成熟卵の数に顕著な減少がみられた。このことについては、APNL欠損は血液消化の初期には影響を及ぼさないが、後期のペプチドの分解に影響を及ぼしている可能性が考えられる。一方、APNL-KO系統のKOホモの雄個体では特に交尾や子孫の発生率への影響はみられていない。以上の結果より、APNLは雌の妊性に関与することが考えられ、APNLが妊性を制御する標的になる可能性が示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Efforts To Enhance Safety Measures for CRISPR/Cas-based Gene Drive Technology in Japan. (2020)
  • 著者名/発表者名: Tanaka T, Tanaka N, Nagano N, Kanuka H, Yamamoto DS, Yamamoto N, Nanba E, Nishiuchi T
  • 雑誌名: Journal of Environment and Safety 巻: 印刷中 ページ: -
  • DOI: https://doi.org/10.11162/daikankyo.E19SC0801
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A synthetic male-specific sterilization system using the mammalian pro-apoptotic factor in a malaria vector mosquito (2019)
  • 著者名/発表者名: Yamamoto Daisuke S.、Sumitani Megumi、Kasashima Katsumi、Sezutsu Hideki、Matsuoka Hiroyuki、Kato Hirotomo
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 9 ページ: 8160
  • DOI: https://doi.org/10.1038/s41598-019-44480-0
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] PCR-RFLP analyses of Leishmania species causing cutaneous and mucocutaneous leishmaniasis revealed distribution of genetically complex strains with hybrid and mito-nuclear discordance in Ecuador (2019)
  • 著者名/発表者名: Kato Hirotomo、Gomez Eduardo A.、Seki Chisato、Furumoto Hayato、Martini-Robles Luiggi、Muzzio Jenny、Calvopi?a Manuel、Velez Lenin、Kubo Makoto、Tabbabi Ahmed、Yamamoto Daisuke S.、Hashiguchi Yoshihisa
  • 雑誌名: PLOS Neglected Tropical Diseases 巻: 13 ページ: e0007403
  • DOI: https://doi.org/10.1371/journal.pntd.0007403
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Further insight into the geographic distribution of Leishmania species in Peru by cytochrome b and mannose phosphate isomerase gene analyses (2019)
  • 著者名/発表者名: Kato H, Caceres AG, Seki C, Silupu Garcia CR, Mauricci CH, Castro Martinez SC, Paico DM, Castro Muniz JL, Troyes Rivera LD, Villegas Briones ZI, Quincho SG, Sulca Jayo GL, Villafuerte ET, de Lara Estrada CM, Arias FR, Passara FS, Llerena NR, Kubo M, Tabbabi A, Yamamoto DS, Hashiguchi Y
  • 雑誌名: PLOS Neglected Tropical Diseases 巻: 13 ページ: e0007496
  • DOI: https://doi.org/10.1371/journal.pntd.0007496
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] A Viral-Vectored Multi-Stage Malaria Vaccine Regimen With Protective and Transmission-Blocking Efficacies (2019)
  • 著者名/発表者名: Yusuf Yenni、Yoshii Tatsuya、Iyori Mitsuhiro、Mizukami Hiroaki、Fukumoto Shinya、Yamamoto Daisuke S.、Emran Talha Bin、Amelia Fitri、Islam Ashekul、Syafira Intan、Yoshida Shigeto
  • 雑誌名: Frontiers in Immunology 巻: 10 ページ: 2412
  • DOI: https://doi.org/10.3389/fimmu.2019.02412
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] ハマダラカにおける吸血及びマラリア媒介機構の研究 (2019)
  • 著者名/発表者名: 山本大介
  • 雑誌名: 衛生動物 巻: 70 ページ: 145-146
  • DOI: http://ci.nii.ac.jp/naid/130007733291
  • オープンアクセス
• [学会発表] ハマダラカの吸血・病原体媒介機構の研究 (2019)
  • 著者名/発表者名: 山本大介
  • 学会等名: 第71回日本衛生動物学会大会（招待講演）
  • 招待講演
• [学会発表] 性分化遺伝子の制御を受けるハマダラカ血液消化関連遺伝子の探索 (2019)
  • 著者名/発表者名: 山本大介・炭谷めぐみ・加藤大智
  • 学会等名: 第55回日本節足動物発生学会大会
• [学会発表] ハマダラカ雌におけるdoublesex遺伝子欠損の吸血・血液消化への影響 (2019)
  • 著者名/発表者名: 山本大介・炭谷めぐみ・加藤大智
  • 学会等名: 第90回日本動物学会大会
• [学会発表] マウスBax遺伝子を利用した新しい細胞死誘導システム (2019)
  • 著者名/発表者名: 炭谷めぐみ・山本大介・笠嶋克巳・山田信人・坪田拓也・飯塚哲也・瀬筒秀樹
  • 学会等名: 第90回日本動物学会大会
• [学会発表] ハマダラカにおける性分化制御の研究 (2019)
  • 著者名/発表者名: 山本大介
  • 学会等名: 第75回日本寄生虫学会西日本支部大会（招待講演）
  • 招待講演
• [学会発表] PCR-RFLP法を用いたエクアドルに分布するリーシュマニア原虫種の同定 (2019)
  • 著者名/発表者名: 加藤大智・Eduardo A. Gomez・関千里・Ahmed Tabbabi・山本大介・橋口義久
  • 学会等名: 第79回日本寄生虫学会東日本支部大会
• [学会発表] ペルー共和国におけるリーシュマニア原虫の地理的分布 (2019)
  • 著者名/発表者名: 加藤大智・Abraham G. Caceres・関千里・久保誠・Ahmed Tabbabi・山本大介・橋口義久
  • 学会等名: 第60回日本熱帯医学会大会