本研究はゲノム編集技術の一つであるTALENを応用し、カイコで遺伝子の発現制御を行うことを目的とする。カイコではRNAiによる遺伝子ノックダウンを行うことが困難であり、その代替技術としてTALENの制限酵素部位FokIと転写抑制因子のリプレッサードメインとを差し替えたTALERタンパク質が利用可能かどうかを明らかにする。 H28年度は標的遺伝子の選定を行い、後部絹糸腺で発現する絹タンパク質遺伝子h-fibroin(h-fib)およびその発現を制御する転写制御遺伝子Arrowhead(Awh)の2つを標的とすることとした。h-fibおよびAwh遺伝子のプロモーター部位のゲノムシーケンスを、組換えカイコ系統を樹立する白C系統より決定し、それらを標的とするTALENを構築した。続いて、ショウジョウバエの転写抑制遺伝子hairyのカイコホモログを検索し、BGIBMGA005390が該当することを見出した。当該遺伝子の転写抑制ドメインを単離し、TALENのFokIと差し替えてTALERを構築した。このTALERをUASベクターに挿入し、カイコに導入するためのコンストラクトとした。 H29年度は上記コンストラクトをカイコ初期胚に注射し、強制発現系統の作出を進めた。h-fib遺伝子のプロモーターを標的とするTALERのUAS系統について1系統得ることができ、後部絹糸腺でGAL4を発現するAyFib-431a系統と交配し強制発現を行った。導入したコンストラクトの発現確認を行うために、後部絹糸腺からRNAを抽出してhairyに対するプライマーでRT-PCRを行い、確かにコンストラクトが発現していることが確認された。 H30年度はH29年度に作出した系統についてh-fib遺伝子の発現をRT-PCRにより解析した。その結果、h-fib遺伝子の発現抑制は起こっていないことが明らかになった。
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