研究課題/領域番号 |
16K18828
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
中澤 昌美 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (90343417)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオ燃料 |
研究実績の概要 |
微細藻類ユーグレナ(和名ミドリムシ)は、低酸素・嫌気環境下で脂肪酸脂肪アルコールエステルであるワックスエステルを生産する。本研究では、ミトコンドリア電子伝達系が低酸素下ユーグレナ代謝に及ぼす影響、中でも特にワックスエステル合成に及ぼす影響について、主に阻害剤を用いたアプローチで探索した。さらに、低酸素下ATP獲得系としてのフマル酸呼吸およびその系への炭素供給経路を明らかにするために、遺伝子ノックダウンの手法を用いて解析を進めた。 低酸素曝露時に複合体I阻害剤ロテノンもしくはフマル酸呼吸阻害剤パモ酸ピルビニウムを添加することにより、ワックスエステル生産量がコントロールに比べ大幅に低下した。フマル酸呼吸の阻害により、炭素鎖数が奇数のワックスエステルの割合が顕著に減少していた。このことから、フマル酸呼吸によるコハク酸生産は、ワックスエステルへの奇数鎖アシルCoA供給に寄与している可能性が示唆された。 次に、コハク酸から奇数鎖アシルCoA合成プライマーであるプロピオニルCoA合成に至る経路を遺伝子サイレンシングの手法を用いて探索した。その結果、従来予想されてきた経路のうちスクシニルCoA合成酵素、メチルマロニルCoAムターゼはプロピオニルCoA合成に寄与していたが、メチルマロニルCoAエピメラーゼおよびプロピオニルCoAカルボキシラーゼはプロピオニルCoA合成に寄与しておらず、別の代謝経路が関与している可能性が強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ユーグレナが低酸素下でフマル酸呼吸を行っており、ATPおよびワックスエステル合成に寄与していることを初めて明らかにすることができた。さらに、ワックスエステル合成におけるプロピオニルCoA供給系の解析についても順調に推移し、従来の代謝予測モデルを修正する必要があることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリア電子伝達阻害剤を用いた解析では、代謝物の解析によりワックスエステル合成に炭素が消費されない場合の側路の解明につながる情報を獲得する。ワックスエステル合成におけるプロピオニルCoA供給系の解析については、未解明である「メチルマロニルCoAからプロピオニルCoAへの変換反応」を触媒する酵素を見出すことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画と比較して、特に人件費・謝金への経費使用が少なかったため、次年度使用額が生じた。これは、当初想定していた英文校閲依頼先および論文投稿先(オープンジャーナル)からの変更が生じたためである。
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次年度使用額の使用計画 |
次の論文投稿先をオープンジャーナルへの投稿を想定しており、その投稿までの英文校閲費用および論文投稿代金へと充てる。
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