本年度は、重金属を比較的多く含むの水田土壌を供試して、湛水土壌培養実験ならびに水稲ポット栽培実験を実施し、純酸素から作成したナノバブル水(NB)の潅漑による土壌還元抑制効果を検証した。 湛水培養実験では、実験要因として、潅漑水の種類(2水準)と粉砕稲わらの添加量(2水準、多・少)の計4処理を3反復で設定した。潅漑水は、対照の水道水(CT)および市販の発生装置を用いて作成したNBの2水準である。湛水を保ちつつ、ポット下端から送液ポンプを用いて一定速度で連続排水し、30℃の暗条件で6週間培養した。排水中への溶存温室効果ガス排出量(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素)を定期的に測定した。その結果、溶存メタン排出に対する交互作用が見られた。すなわち、メタンは排出の大きい稲わら添加量が多い場合にのみ、NBによる削減効果が認められた。 水稲ポット栽培実験では、実験要因として、潅漑水の種類(2水準、CTとNB)を4反復で設定した。常時湛水を維持しつつ、培養実験と同様に、ポット下端から送液ポンプを用いて一定速度で連続排水した。水稲収量、メタン・一酸化二窒素の直接排出量、排水中への溶存温室効果ガス排出量(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素)、重金属溶脱量(鉄、ヒ素、マンガン、カドミウム)を定期的に測定した。その結果、NBによってメタンの直接排出量は5%低下し、特に開花期前までを見た場合は10%低下した。鉄の溶脱量もメタンの排出量が少ないNBにおいて低下傾向が見られた。水稲収量には潅漑水の種類の効果は見られなかった。
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