本研究では、近代湘南海岸における「サナトリウム」「療養下宿」「別荘地」をサナトリウム群と捉え、そこで展開されたメディカルツーリズムの実態を明らかにすることを目的とした。その結果、近代の湘南海岸に設立された12のサナトリウムのうち特徴的なメディカルツーリズムが茅ケ崎と鎌倉で展開されたことを捉えた。茅ケ崎では、サナトリウム「南湖院」による徹底した衛生指導の下、比較的重篤でない患者を中心に湘南海岸、および東海道線沿線のまちにおけるメディカルツーリズムが、鎌倉では特に沿岸の地区において、藤沢から逗子に至る比較的広範囲において療養や通院と地域散策を為し得る体制が整っていたことを捉えた。
|