研究課題
細菌の「生きているが培養できない:viable but non-culturable (VBNC)」状態は、低温などの何らかの環境ストレスにより、もともと培養可能だった細菌が、培養できなくなる現象である。VBNCは様々な細菌種で見出されている現象だが、VBNC状態への誘導に機能する遺伝子のうち、同定された遺伝子はさほど多くなく、植物病原細菌では低温や貧栄養などの環境ストレスによってVBNC状態が誘導されることは報告されているものの、誘導に関わる遺伝子発現制御機構は知見が極めて乏しいのが現状である。そこで本研究では、植物病原細菌からVBNC状態誘導に関わる遺伝子を同定することを起点とし、VBNC誘導における遺伝子発現制御機構の解明を目標としている。VBNC状態が誘導されるためには、VBNC状態に誘導する何らかの環境シグナルを認識する因子と、環境シグナルの認識後に、VBNC状態になるための遺伝子発現調節を制御する因子の存在が推測される。しかし、環境シグナルを認識する因子やその下流の因子が環境シグナル毎に異なるのか、あるいは同一なのかは定かではない。本研究では、VBNC誘導誘導のメインストリームで機能する因子の同定を目指していることから、いくつかのVBNC誘導条件で共通して機能する因子の同定を試みる。そこで今年度は、VBNC状態への新規誘導条件の検討と、VBNC誘導に関わる遺伝子が破壊され、VBNCが誘導されない変異株のスクリーニング等を行なった。さらに、これら変異株について破壊された遺伝子の同定を試みた。
2: おおむね順調に進展している
新規のVBNC誘導条件について、VBNC誘導に有効と思われる新条件を得ることができた。また、変異株スクリーニングにより、VBNC誘導遺伝子が破壊されたと目される変異株を得ることができた。これは当初の研究実施計画の通りであり、研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。
今年度の研究により絞り込みを行ったVBNC誘導に関わる遺伝子候補について、更なる機能解析を進める。また、新たなVBNC誘導条件でも変異株スクリーニングを行うほか、網羅的遺伝子解析などを行うことによって、総合的な理解を深めることを予定している。
次年度に網羅的遺伝子解析等を実施予定であり、それらの物品代が高額になる可能性があることから、次年度使用額が発生した。
網羅的遺伝子解析において、変異体の遺伝子発現量の変化などをRNAレベルで解析予定である。
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Journal of General Plant Pathology
巻: 82 ページ: 220-223
10.1007/s10327-016-0658-7