研究課題/領域番号 |
16K18841
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斉藤 竜男 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 助教 (40612065)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 環化反応 / DFT計算 / 天然物合成 / 機能性分子 / ポリエーテル |
研究実績の概要 |
天然有機化合物には様々な有用な生物活性を示すことから医薬品や農薬として応用されています。その中でも中員環を母骨格として持つ天然物も少なくなく、単工程効率的な構築法の開発は有機合成化学上非常に重要な課題です。一般に中員環化合物はエントロピー負荷や渡環相互作用によりその合成は著しく制限されます。またオレフィン閉環メタセシスは中~大員環の合成で実績があり,これまで天然物合成研究に幅広く用いられているものの,その前駆体の調製やその後の官能基変換でいくつか制限があります。それらを解決する方法として遷移金属触媒を用いた環化異性化反応は強力かつ直截的な手法の一つであると考えられます。申請者は金の特異な反応性(強いパイ電子親和性,金カチオン中間体の安定性、低い求核性)に着目し、複雑な構造を有する含中員環天然物の合成を志向した、触媒的環化反応の研究に取り組みました。28年度はポリエーテル系天然物合成を志向したエンド、エキソ選択的なエーテル環合成法を開発しました。さらにエーテル環合成における金触媒の作用機序について理論解析を行い、求核付加段階のみではなくプロト脱金化段階も環化反応進行において重要であること、環化位置(エンド、エキソ環化)のエネルギー差が選択性に反映されていることを明らかにしました。これらの反応はクロスカップリング反応と組み合わせることもでき、その一例としてポリエーテル系天然物合成の新たな手法を示しました。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の達成目標である位置選択的環化反応を高収率で達成しました。また理論計算によって明らかにした選択性の起源についての知見をもとに合成戦略を再設計し、今回開発した環化反応とクロスカップリングとの連続反応を行なうことで、ポリエーテル系天然物で広く存在する6-6 縮環構造と 6-7 縮環構造を選択的に作り分けることに成功しました。
|
今後の研究の推進方策 |
提案目標課題の一つである直截的中員環合成法を高選択的に実現できるようになりました。今後中~大員環の合成についても検討を進めるとともに、理論計算を用いてその詳細を明らかにします。また本反応を用いた生理活性物質や機能性分子の合成を行なう予定です。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は比較的順調に進んだため、既に合成した基質をベースに条件検討を行ない、成果をまとめました。さらに次年度研究予定のクロスカップリング反応を当研究室所有の計算機を用いて、理論計算による条件検討を行ないました。理論計算の結果、クロスカップリングの条件検討で用いる最適(と思われる)触媒やリガンド、もしくはそれらを調製する原料が高額であることがわかり、次年度に購入予定のため申請時と異なる使用計画となりました。
|
次年度使用額の使用計画 |
主に化合物合成、触媒合成のための試薬購入に次年度使用額を充てる予定です。また未報告の新規リガンドの合成も予定しています。
|