イナミドに対し有機酸を作用させることにより生じるケテンイミニウムは非常に活性の高い求電子種であり種々の求核剤と反応すること ができるため、イナミドは非常に魅力的な合成素子である。しかしながら、酸触媒とイナミドにより生じるケテンイミニウムを用いた反応開発はあまりなされておらず、ケテンイミニウムを鍵とする含窒素複素環合成反応を検討することとした。本研究では、イナミドに対し有機酸を作用させること によるケテンイミニウム形成を鍵とする効率的環化反応について研究をおこなった。 (1)スピロ五員環形成を鍵とする連続反応によるイナミドを用いた複雑天然物の効率的全合成;原料であるイナミドは、3つのフラグメントから2つのカップリング反応により大量合成が可能となった。目的物の不安定中間体であるスピロインドリンの形成につづく、外部求核剤(アリルシランやシリルシアニド)との連続反応により、複雑なスピロインドリン骨格を効率的に合成できることを見出した。さらに遷移金属触媒をもちいた場合には、酸触媒と異なる生成物をあたえる想定外の反応も見出すことができた。 (2)効率的含窒素中員環化合物の合成;適切な位置に2重結合を有するエンイナミドを用いて種々の検討を行った結果、強酸触媒としてトリフルオロメタンスルホン酸を10モル%、トルエン中反応をおこなうことで、7から9員環の含窒素複素環を効率的に合成できることをみいだした。さらに種々の置換様式のエンイナミドに対しても反応は良好に進行し、多彩な含窒素複素中員環も合成できた。得られた生成物のさらなる官能基変換により、複雑な含窒素複素環の構築にも成功した。
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