研究課題/領域番号 |
16K18843
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
高木 晃 神戸薬科大学, 薬学部, 特任助教 (00758980)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ベンザイン / ボリル基 / ジアミノナフタレン / ピナコール / 求核付加 / 計算化学 |
研究実績の概要 |
本申請研究はホウ素が置換したベンザインを用いた反応における反応位置を、理論と計算を相補的に活用して制御することを目的とした研究である。当該年度は研究実施計画に基づき大きく2つの結果を得た。 1.ボリルベンザインとアミン類との求核付加反応においてジアミノナフタレンを有するボリル基を持つベンザインは、ベンザインの発生に利用するフッ化セシウム由来のフッ素アニオンとも反応し、フッ素付加生成物が得られることが判明した。本条件では求核力の高いアミンが存在していても付加体が得られるため、ジアミノナフタレニルボリル基のフッ素アニオンへの親和性が非常に高いことが考えられた。この結果は計算化学からも強く支持することができ、ジアミノナフタレニルアミド基のプロトン性水素との水素結合が高い選択性に関与していることが示唆された。そこで、収率の向上を目指してベンザインの発生に使用するフッ素アニオンの量を低減すると、フッ素化体の生成が抑制されることで収率の改善が見られ、位置異性体の生成比を比較することができた。また、求核付加反応に用いる溶媒をピリジン系に変えることでメタ体が優先的に得られることを以前に発見していたが、本条件においても今年度の結果からフッ素源の使用量を低減させることで収率の改善が見られた。 2.これまでに銅触媒を用いたボリルベンザインとアルキン、アリルクロリドとの三成分連結反応はボロン酸の保護基を変換することで位置選択性が逆転することを明らかとした。そこで、より高い選択性を発現させるために最適なホウ素上の置換基を計算化学を用いて調べた。その結果、以前の結果と同様にホウ素上の置換基として三次元的に嵩高いものとそうでないもので選択性に差が出てきた。今後本計算で得られた保護基が実際の実験でどの様な選択性を示すかを試す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始当初は計算化学と実験化学を並行しながら相補的に研究を推進する予定であった。しかし、予想していた以上にに副反応が優先的に得られることから、目的遂行のために副反応の原因を探していた。その結果、計算化学からも興味深い結果が得られたため、副反応のメカニズムを調べ、問題点の解決を行うために当初の予想よりも時間がかかり、遅れが生じた。しかし、副反応の原因や解決策を発見できたため、研究計画に基づく研究の遂行に対する影響は少ない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度はボリルベンザインを用いた際の予想外の副反応が得られたこと、その原因を判明したことで、ボリル基の特性をより詳細に知ることができた。そこで、平成30年度は以下に示す計画を、これまでに知り得たボリル基の特性を積極的に利用することで位置選択性の自在制御に挑戦する。 ①ベンザインと反応剤との水素結合を利用したオルト位選択的な反応の促進 ②ベンザインと添加剤との水素結合を利用したメタ位選択的な反応の促進 ③ボリル基の立体効果を利用したオルト位メタ位の選択性制御
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の実験計画よりも遅れが生じたため、実験で使用する試薬、溶媒、ガラス器具、カラムクロマト担体などの使用額が予想よりも少なくなった。次年度引き続き実験を行うため、これらの購入に充てる予定である。
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